五流小説家の夢

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 昨日ベンチプレスの時にでも、歯を食いしばるようなことをしたのだろうか。  それとも、もともと虫歯でもあったのだろうか。  授賞式の途中で痛み出しては敵わない。 「そうだ、歯医者に行こう」  私は歯科健診のおすすめ葉書を受け取りながら、5年以上連絡をしていなかった歯医者へ予約を入れる。  最後に行ったのはいつだっけ……。  ひどい虫歯は無かったが、奥歯の小さな虫歯と前歯の裏の歯石の溜まりを指摘され、定期的に虫歯のチェックと歯の掃除に通う事をお勧めされた。  今日は上の歯の掃除だけで、次回予約の再来週に下の歯の掃除をするという。  何故一気にやってくれないのか。  待合室でぼんやり会計を待ちながらテレビを観ていると、『列車で一人旅』の番組が放送されていた。  そうだ。  現地へ向かう手段は列車で大丈夫だろうか。  私は車どころか運転免許証を持っていない。  携帯のアプリの地図で交通手段を確認すると、現地はひどい山奥で、唯一の地元鉄道ががけ崩れの影響で運休し、復旧の目途が立っていないという。  最寄り駅を降りると徒歩50分となっていた。  バスの運行は早朝と夕方のみ。  ―――何という事だ!
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