五流小説家の夢

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 そして迎えた授賞式2日前。  明後日は朝から移動すれば、授賞式に充分間に合う。  交通費は向こうもちで、最寄り駅からは無料バスが出ているとの事。  授賞式でのコメントも、サインのデザインも練習も完璧だ。  2ヶ月間運動と軽い食事制限を毎日頑張ったおかげで、私は減量に成功し、消えていた顔の輪郭が存在を主張し始めた。 「さぁ、スーツを買いに行かなくては」  もし2ヶ月前の時点でスーツを購入していれば、私はダボダボのスーツを着なくてはいけないところだった。  なんせ、この2ヶ月で7kgも体重が減ったのだから。  今の体型にピッタリのスーツがきっと一番様になって見えるはずだ。  私は美容院の帰り道に紳士服専門店へ向かった。  貫禄は必要ないのだ、さほどお高いスーツを購入する必要はない。  若々しく、なおかつ上品さのあるデザインを選ぶ。  おぉ、これだ。  このスーツがいい。  今の私によく似合う。  担当の者に「お似合いですよ」とおだてられながら、ズボンの裾上げのための長さ確認をしてもらう。  会計を済まし、いざ商品を受け取ろうと…。 「お渡しは明後日の正午以降となります」と平然と言って退()ける担当者。  明後日の正午!?  ―――何という事だ!  明後日の朝には出発するということを訴えるが、 「こちらの商品は特殊な生地のため、ベテランに対応させて頂くのですが、本日と明日、お休みをいただいておりまして…」と、明日までの引き取りが出来ないと言われる。  そんな!では他のスーツで…!いや、やっぱりこのスーツがいい!  このスーツが一番私に似合ったのだ!  なぜもっと早くにスーツを購入しておかなかったんだぁぁ…。  と、泣き叫びながら目が覚めた。
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