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それが立ち上がったと通報があったのが20分前。研究室に運び込まれたのは5分前。
ものものしく武装した護衛官を両脇に従え、私はそれと対面する。
報告によれば、それが立ったのは浜に打ち捨てられてから一週間が経った後だった。
「私は鳥です。博士、お目にかかれて光栄です」
両手足を拘束されたそれは思いの外、流暢に言葉を話した。
赤茶けた全身はまるで巨大なブリキのおもちゃだ。
「こんにちは、鳥。君はどこから来たのかな?どうしてこの島へ?」
「わかりません。博士、あなたは私の主人ですか」
鳥の顔のパーツはデフォルメされた目しかない。しかし、まるで口があるかのように、話すたび、錆びた金属がキシキシと不愉快な音をたてる。
「いいや、私は主人ではない。君は他国からの不法侵入者として法律に則った裁きを受けなければならない。ただし私の研究に協力すれば減刑が適用される」
「私には判断できません」
「ならば、私が決めよう。君は今日から被検体23MBだ」
「はい、博士」
「よろしい。食事はいるかね?」
「はい。ご慈悲を感謝します」
脇の護衛が目配せして部屋を出ていく。
食事。
完全なる機械の体を持ちながらそれを欲するのは、23MBが合成人的生命体である証だった。
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