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薬の投与を始めてニ日、検診で23MBが言った。
「帰りたいです」
「どこから来たか思い出したのかい?」
「いいえ。でも帰りたいのです」
初日に食事として出した粗末なパンを案の定23MBは食べることはできなかった。
以降、食事がだされないことにも23MBは不満を持っている様子だ。
三日目、いつも椅子に座ってうつらうつらしていた23MBが窓辺で日光浴をしながら私を出迎えた。
「機嫌がいいようだね」
「はい。もう帰っていいですか」
「帰る場所がわかったのかい?」
「いいえ」
四日目、明らかな変化が23MBに現れた。片方しかなかった翼が両翼揃ったのである。
「博士、羽が生えました」
「ああ」
「これから私はどうなるのでしょう」
「本当の姿に戻るんだよ」
「本当の姿とはなんでしょう」
「君の場合は鳥だろう」
「そうしたら私はどうなるのでしょう」
「鳥の私はどうなるのでしょう」
「鳥ではない私はどうなるのでしょう」
キシキシと耳障りな23MBの声が矢継ぎ早に問う。
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