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その様子を他の招待客達も目撃し、大きな悲鳴が彼方此方からあがった。
その中には我先に逃げ惑う男達や、狼狽えて立ち竦んでしまう女性達がいる。
瞬く間に会場内に、恐怖と混乱が伝染していた。
すると今度は、会場の出入口の扉が開くと、城の数多くの近衛兵達が雪崩れ込んできた。どうやら騒ぎを聞き付けて駆けつけたようだ。
「何事だ!」
と先頭の大柄な男が叫び、辺りを確認しながら中央の舞台へと駆け寄っていく。赤い髪と真っ赤な軍服を着た人だ。彼は私の父であり、城代及び近衛騎士団団長のスカーレット伯爵である。
私も訳が解らずに呆然としていたが、すぐに我に返ると、父の後に続いてシヤリーの側へ向かい、呼び掛ける。
「シヤリー!!」
「カレンナ?!」
と彼女も気がつき、顔だけを振り向かせて返事をしてきた。ずっとヴィシュー皇太子殿下に付き添い、ハンカチを彼の腕に押し当てて傷口の止血をしている。
その隣では、ヴィシュー皇太子が前をじっと見つめていた。
彼の視線の先では、父がナンリー姫殿下の羽交い締めにして、動きを抑えている。さらには必死に大声で呼び掛けていた。
「ナンリー様!…お気を確かに!」
しかし、それでもナンリー姫殿下の様子は変わらない。ずっと呼び掛けに反応せずに、
「殺す殺す殺す殺す、…。」
と、戯言の様に呟きながら、虚ろな目をシヤリーに向けている。
そこへ私も、ようやく中央の舞台に辿り着く。
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