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だが突然、ふと会場内が暗くなった。
「な、何だ?!」
「シャンデリアの灯りが消えたぞ!」
と、誰かが慌てて言う声がする。
ついでに周囲の人々も、余計に混乱してざわつきだす。
しかし、すぐにシャンデリアの灯りが再び点されて、急に明るくなった。
私は目をしばたたかせ、明るさに慣れてきたら、周囲を見渡す。
「なに?!」と、父の驚く声が、辺りに響く。
ほぼ同時に、私は振り返り、様子を伺う。
すると、不思議な事が起こっていた。
なんと、ナンリー姫殿下の姿が消えていたのだ。
シヤリーや他の招待客も、同じく気がついた。さらには、
「おい、階段の上のところを見ろ!」
と、誰かが叫びだした。
それを合図に、会場内の全員が、一斉に其方を振り向く。
「え?」と、再び私も振り向いた。
すると、そこには誰かが立っていた。此方の方を見下ろしているようだ。すぐ側には、ナンリー姫が階段の段差の上で、横に寝かされている。まるで人質のようだ。
そいつは、とても怪しい人だ。衣類を着込んで正体を隠している。
まず灰色の唾広の帽子を目深に被り、ペルソナマスクを着けて素顔が口元しか見えない。さらに帽子と同じ色の外套で全身を覆っており、スリットの僅かな隙間の下は、黒いスーツを着て、白い手袋まで身に付けて、徹底的に素肌を晒さない様にしていた。また足元には、見覚えのある高級そうな服が脱ぎ捨てられている。
「まさか、…アルジェン……?」
その時に、私は呟きながら、緊張から思わず息を飲んだ。相手の姿と特徴が、どこかで聞いた噂話と合致しているのに気がつき、視線が釘付けとなる。
その直後に、怪しい人物、ーーアルジェンは、
「この姫は、………連れていく。」
と言い、姫の身体を抱き抱えると、すぐさま階段を上がり、二階部分の廊下を走り去っていく。
瞬く間に、二人は会場から姿を消した。あっという間に、足音が遠ざかっていく。
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