序章 怪盗アルジェン

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 魔導国【リタニア】。世界で最も大きく、様々な魔術によって発展し、高度な文明が栄た国として有名だ。  しかし、それはかつての栄光だった。国の代名詞とも言われていた魔術は今や見る影もなく、廃れてしまっていたのだった。  だが、その原因は不明である。  そんな国の南に位置するのは、首都である沿岸の城郭都市【ロストカ】。  そこでは、ある日を境に「アルジェン」と呼ばれる怪盗が現れた。国で最も名前の知られた悪党である。灰色の帽子を目深く被り、同色の外套を身につけた正体不明の人物である。  そいつは主に国の人々から、最も大切な何かを盗み、犯行を繰り返す。また犯行後には忽然と姿を消してしまい、誰も捕まえる事すら叶わないのだ。  さらには「アルジェン」を見た者は、全員が決まって銀の髪をしていると証言していたが、何故か容姿は定まらず様々な姿が囁かれる。噂では、ある者は老人と言い、ある者は二枚目の若者と言い、はたまた絶世の美女とも言われていた。  その正体や目的は謎に包まれており、定かではない。……  ……その筈だった。…この時までは、……。
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