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そんな様子を、私、ーーカレンナ・スカーレットは眺めており、
「そろそろ始まるのか。…」
と呟くと大きく深呼吸していた。さらには、二階から手摺を伝って下の階へと降りていく。一歩ずつ前に進む毎に、辺りの様子を伺いながら鋭い視線を向けており、周りの招待客の挙動に目を光らせている。ようやく一階に辿り着くと、余計に険しい顔になっているのに気がついた。
ほぼ同時に周りから、多くの招待客の視線と声が聞こえてきた。特に若い女性の興奮した声が多い。
「ねぇ、…あちらの方。…」「あの赤く短い髪、黒いドレスって、…」
「まぁ!!…スカーレット伯爵令嬢だわ。」
「…いつ見ても、……凛々しいわね!!」
と何処かの誰かが言った。それを皮切りに、他の招待客も交じって、まるで囁くように互いに会話をしだす。どうやら私や私の実家の事について噂をしているようだ。
「あれが、…城代及び近衛騎士団を勤めるスカーレット伯爵の一人娘なのか。」
「なんと?!…スカーレット伯爵とな!」
「おぉ、あの数々の武勲を得て、名を馳せた剛将と有名な人ではないか!」
「あの娘も噂では、…かなりの者だと言うが?」
「…あぁ。…女だてらに、国軍の正規兵士を打ち負かす程の剣の実力者とか。…軍服で兵士達と訓練をしているのを見たことがあるぞ。」
「凄まじいな。……。」「本当に女なのか?」「いや、胸があるぞ。」
「…あまり、舞踏会では見かけぬが、…今回は参加されているのだな。…」
「あら、知らないの?…だって、スカーレット伯爵令嬢って、…皇太子殿下の婚約者とは。…」
と、また誰かが言おうとしたが、ーー
途中で別の場所から他の誰かが、さらに大きな声で話を遮る様に周囲に呼び掛けてきた。
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