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「おい、見ろ!」
やがて辺りがざわつきだす。
それから、会場内の人々が正面、ーー二階に続く大階段、へと次々に顔を振り向かせていく。
その視線の先には、ドギアス王陛下がいた。白髪交じりの大柄な初老の男性で、人々からは賢王と呼ばれ、敬われている。
そんな彼が周囲を見渡しながら、
「…皆の者。…今宵は我が息子の為に、集まってくれて感謝する。ワシからの心ばかりのもてなしだ。…世界各国の極上の料理や旨い酒を、存分に心ゆくまで堪能してくれたまえ。」
と、招待客に向けて労いの言葉を送っていたのだった。
すると次の瞬間に彼の側へと、三人の若者が階段を降りながらやってきた。同世代の男女一組と、可愛らしい少女である。皆で横並びになりながら階段を降りて来た。
その内の男と少女は、この国の王族だ。兄の皇太子殿下と妹の姫殿下である。
まず皇太子殿下、ーーヴィシュー様は、短い黒髪が特徴的な、背が高くスマートで紳士的な青年だ。先に階段を下りつつ、隣の妹に付き添う様に、手を引きながら歩いている。
その妹の姫殿下、ーナンリー様は、まだ14歳の小柄な少女である。グレージュ色の長い髪や小動物な容姿は、まるで精巧に作られた人形のようだ。ゆっくりと兄の後に続きながら、周囲に手を振り返して挨拶しつつ、満面の笑みを振り撒く。
さらに二人の隣では、兄の婚約者である侯爵令嬢が付かず離れずに歩いている。その名前は、シヤリー侯爵令嬢である。赤みがかった長い茶髪と白い肌が特徴的で、微笑ましそうに兄妹へ可愛らしい笑顔を向ける。また華奢な体に地味な色ながら仕立てのよいドレスを身に纏っているのだった。
そんな彼らが、やがてドギアス王殿下の側に辿り着く。
すると彼は、すぐさまに兄妹とシヤリーを、己の左右に並ばせると、全員の肩を抱きよせた。家族の仲睦まじい姿を周りに見せつけるようだった。
それを合図に、招待客の貴族達は喝采を挙げ、さらに惜しみ無い拍手を送ってきた。
それから程なくして、宴が本格的に開始されたのだった。
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