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第11話 貴族会議
王宮本堂の白い漆喰の壁の大広間に王弟シーシンの侍臣のマンコン、総務長官のカラホム、そして宮内長官のシーウォラウォンなど王宮の大官たち十数名が集まっていた。ソンタムが息を引き取ってからすぐにシーウォラウォンが招集したのである。全員で室内の中央に置かれた大きな木製テーブルを囲んでいた。
ピリピリと張り詰めた空気の中、シーウォラウォンが厳かに口を開いた。
「では、ソンタム王の望みどおり、王位はジェッタ殿が継承し、私がその補佐を行うということでよろしいですな」
「ふざけるな!」
マンコンがそれに食ってかかった。
「ジェッタ殿はまだ子供ではないか。あんな子供にいったいなにができると言うんだ!」
「ですから、成人するまでは私が補佐を行うと……」
「シーウォラウォンよ、そなたの企みはわかっている。ジェッタ殿を傀儡にして自分がこの国を牛耳ろうとしているのであろう」
そう言ったのはカラホムだった。立派な口ひげをたくわえて男らしい太い眉を生やしているが、目は草食動物のように小さく、穏やかな雰囲気を漂わせている。
「そんなこと考えるわけがありません。何度も申しますが、これは私ではなく、ソンタム王の望みなのです」
「私は反対だ。王位継承者はシーシン殿こそが相応しい」
「そうだ、そうだ」
その場にいる大官の大半がカラホムに賛同の声をあげた。
「そうですか。まあ、それでもいいでしょう。ただし、忘れないでいただきたい。この王宮を取り囲んでいる一万を超える兵が私の合図ひとつですぐにここに攻め入ってくるということをね。それでもいいのなら、王位継承者はシーシン殿にすればいい」
「貴様……」
カラホムが小さな目を細めてシーウォラウォンを睨みつける。
「ここを取り囲んでいる兵の中には山田長政殿の率いる日本人義勇軍もいます。彼らは王宮の大官をあまりよく思っていないようですからな、いったいどんなことをしでかすかわかったものではありませんぞ」
シーウォラウォンのその言葉に他の大官たちは苦渋の表情で黙り込んでしまう。大広間を支配する重い沈黙。それを破ったのはマンコンだった。
「うお———ッ!」
彼は椅子から立ち上がって雄叫びを上げると、漆喰の壁を殴りつける。大広間全体がズシリと揺れ、壁には彼の拳の跡がくっきりと残された。
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