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第6話 ソンタム王との謁見
長政がアユタヤ王宮からの呼び出しを受けたのは、彼の率いる日本人義勇軍がスペイン艦隊を撃退した三日後のことだった。
近衛兵に付き添われて王宮の謁見の間に足を踏み入れ、その内装の豪華絢爛さに目を見張った。黄金色を基調とした柱や壁などの至るところに女性が身に付ける装飾品のような華麗な細工が施されている。ソンタム王の座る玉座は背もたれの上部が三日月のような弧を描いており、その巨大さはまるで城壁のようでもあった。
煙突のように先端の伸びた帽子を被り、白い絹の服を着用した家臣たちが室内の中央を空けて整然と並んでいた。長政はその間を近衛兵と肩を並べて歩いた。玉座の近くまで来たところで近衛兵に背中をポンと叩かれた。
長政は両膝を床について額の前で両手を合わせる。そしてその両手が床につくまで深く頭を下げて言った。
「日本人町頭領の山田長政でございます」
柄にもなく緊張しており、その声は少しだけうわずっていた。
「うむ、よく来た。面を上げろ」
顔を上げた。ソンタムと目が合った。その威厳に満ちた声の印象とは違い、子供を優しく見守る父親のような柔和な目をしていた。彼はほんの数年前まで僧をしていたのだが、父のエーカトットサロート王の死により、急遽、還俗して王位に就いたという。そのためか、僧だった頃の名残がその目元にまだ残っているように思えた。
「この度のスペイン艦隊の撃退、誠に大義であった。そなたたちの働きがなかったら、今頃このアユタヤはどうなっていたことか」
「滅相もありません」
「聞くところによると、そなたは日本との貿易も主導しているそうだな」
「はい、少しばかり……」
「貿易でこの国を富ませていこうというのは私の父の代からの方針でもある。日本との通商は大いに望むところだ。そなたのこれからのさらなる活躍を期待している」
「ありがとうございます」
長政は再び頭を下げた。そこへコツコツと足音が近づいてくるのが聞こえた。顔を上げると、すぐ目の前にソンタムの姿があった。仏塔のように先の尖った冠を両手で抱えており、それを長政の頭に被せて言った。
「そなたを今日からオーククンに任じる」
——オーククン……?
そのときの長政にはその言葉の意味がわからなかったのだが、それはアユタヤ王朝の貴族のランクで上から四番目の階級だった。
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