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とりあえず
ガクッと肩を落として落ち込んでいる雅海など関係なく、お詫びにと置いて行かれた饅頭のパッケージを破いて箱を開けるドムエム
「はぁ!妖精饅頭美味しいですよぉ!まずはこれを食べて!今後の方向性を定めましょう!」
お前のせいで落ち込んでんだよと思いながらも確かに美味しそうな饅頭である温泉饅頭は好きな方だ見た目はまさにそんな感じ、とりあえず饅頭を一口食べるとものすごく美味しい、素朴な甘さでしっとりしていて食べやすい、思わずもう一口食べてしまう
「これ美味しい」
モクモク食べているとドムエムには大きな饅頭を食べながらドムエムが言う
「美味しいでしょー、今鏡見たらビックリするよぉ」
そんなドムエムの言葉に笑って返す
「美味しすぎてほっぺ落ちちゃってるとか?それはびっくりするな」
「いいから鏡見てきなよー」
はいはいと言いながら、もう今の状況が楽しくなって来た雅海は、鏡を洗面台に見に行く
「別に何にもないじゃんただ肌が綺麗に…………え?」
驚いて鏡に近づいて肌を確認する開ききっていた毛穴も締まり、悩みの種のそばかすも消えていて黒ずみさえ無い、みずみずしいうるツヤ肌になっている
「え…………
ええええええええ!?!?!?!?!?!?」
雅海は慌てて部屋に戻る
「ドム……エム?肌が!肌が凄くキレイになってる!!!」
妖精饅頭の蓋を締めて良し良しと満足しているドムエムに雅海がそう言うとドムエムはムフフフフフと気持ち悪い笑いをしてメガネをキラリと光らせて言う
「妖精饅頭は美肌効果があるんですよぉ!でも食べ過ぎは注意ですよぉ一週間に2個までですよぉ、食べ過ぎたらとぉても大変なことになりますからねぇ」
「た、大変なこと……」
ゴクリとつばを飲む、すでに一瞬で肌トラブルをなくしてしまっている時点で大変なことだ、肌を再生しすぎて赤ちゃん返りなどでもすれば確かに大変なことだ、気をつけようと心に誓う
「さて、美肌効果が終わったらまずは見た目からですねぇ蝋梅氏を惚れさせるために貴方は変わらなければいけません」
ゴクリとつばを飲む、変わる……でもいきなり女らしくなって幻滅されたらと思うと可愛い格好なんて物はできないし、そもそも体格がよく女にしては背の高い雅海に女の子らしい可愛い服というのが似合うかどうかの話が出てしまう
「見た目って言っても可愛い格好はハードルが……」
雅海の言葉にドムエムはまたムフフフフフと気持ちの悪い笑い方をする
「何も可愛い格好が全てというわけではありません!今までの服にちょい足しでオシャレさんになれるんですよ!オシャレ=可愛いではなくオシャレ=魅力的になるんです!さぁクローゼットを開けてください!」
ドムエムが確かな自信を持ってそう言うのであまり服の入っていないクローゼットを勢い良く開けるそして持っている服を部屋に出す
1DKの8畳ほどの部屋にパラパラとトップスが10着、ズボンが3着、アウターが2着並ぶ、トップスに関しては車やバイク関係の服が7枚と仕事用のシャツ3枚、靴は履き古しスニーカーと冠婚葬祭用のパンパス一つ、女性らしいといえば1着だけあるスーツドレスとフォーマルセットアップくらいだろうか、これも冠婚葬祭用だろう、
そして昨日着ていた申し訳程度の桜色Tシャツと薄茶色のワイドパンツ選ぶ物は悪く無いが組み合わせが惜しい、濃茶色なら締め色にもなっただろうに同系色の優しい色なので印象がボヤケてしまっている、
「あらぁ悪くはないねぇ、うーんこれとこれ着てみてぇ」
そう言って黒に赤い車の絵があるシャツとデニムのパンツをしめす、雅海は言われたとおりそれを着て見せる、シャツは少しサイズが大きい
それを少しの裾をズボンの腰に噛ませればちょっとオシャレに見える
「じゃぁこれでお買い物に行こー!」
「買い物ぉ?」
そう言われて雅海は買い物に出かけることになったのだった。
日焼け対策の黒いキャップを合わせる。
いつもの格好とほぼ変わらないがそのままのファストショップに出かける
ドムエムに言われた通り服屋に行ってアピール服を買うのだと言うからヒラヒラフリフリとかの可愛いのを買うのかと思ったら、シンプルなTシャツとか抵抗なく着れそうな色やデザインの物が多かった。
だが試着室で着てみると身体のラインが出ている服だった。
「あなたスタイル良いんだものぉ余計な飾り無くてもこれだけで十分女らしさ出るよぉ!」
「そんなもん?」
「そんなもんよぉん!」
ドムエムに言われるままに服を買って次はヘアケア用品、洗い流さないトリートメントなんて初めて買った。
そして色々買って帰路につき買った物を片付けている時だ、葵から電話が来た。
『まさちゃん、今から遊びに行っていい?』
「あ、いいよ、今どこ?」
『そうだと思った、すぐ近くのコンビニだからすぐ行くよ」
「りょーかい、じゃぁな」
電話を切るとドムエムがスマホにひっついていた。
「うお、近すぎだろ」
「今のぉ意中の人じゃないのぉ?」
「え、まぁ」
雅海がそう言うとドムエムは慌てたように言う
「まぁじゃないよぉ!さっきの服に着替えるんだぁ!」
「え、えええ!?」
ドムエムに怒鳴られて慌てて迎え入れる準備をするのだった。
5分後、蝋梅葵は三縄雅海の住むマンションに来ている、昨日様子がおかしかったから少し心配だとはいえ主役不在のまま続いた雅海の誕生日パーティーはどんなに雅海がいいやつかの話で盛り上がったもので嬉しくて最後まで残って自分も二日酔いで朝から訪ねることはできなかったが行かないのも心配だと、雅海が家にいる事を確認して訪ねてきた次第である。
玄関ホールで部屋番号を押したら雅海が出てくれる、そのまま玄関ホールの鍵を開けてもらって雅海の部屋に行く。
部屋についてチャイムを鳴らせば何やらバタバタという音を立てながら玄関の鍵が開く
「まさちゃん何暴れて………」
葵は雅海の姿を見て息を呑む、普段とそう変わらない服装のように見えるが何だか女性らしい曲線に雅海も女だったのだと思わせる、何だか、今更ながら独身の独り暮らしの女性の家にあげてもらうと言う事に照れを感じる
「どうした?葵」
雅海に声をかけられてはっと気がつく、相手は雅海だ、雅海もそこまで意識してないのに今更女性として意識しましたなんて言えやしない
「いや、まさちゃんその服ピチピチじゃない?」
「いや?こういう服だぞ」
「そうなんだ、きつくないの?」
「全然?あ、もしかして可笑しいか?」
雅海が不安そうに言うので自分の言い方が悪いことに気がつく
「いや、いいと思うよ、ちょっといつもと違う気がしてビックリしただけだよ」
雅海にそう言えば胸を撫で下ろし安心したようだ。
いつも通り家にあげてもらえばバタバタしていた理由がわかる、何をしていたのか知らないが服が散乱していていつも以上に散らかった部屋を見て雅海は何も変わってないと少し安堵する
「もーまさちゃん何してたの?すごい散らかってるじゃん」
「服を買ってみたんだけど組み合わせとかわからなくて色々見てたら片付けに間に合わなくてな」
「へぇ!服買ったんだ!いいね!まさちゃんもオシャレに目覚めたの!?」
「もう30だからまともな服着ようかなって思ってな」
「いいね!いいね!けど片付けはちゃんとしなきゃだよ!ほら!一緒に片付けよ!」
そしていつも通り部屋の片付けをして、いつも通りお茶と一緒に葵が持ってきたお菓子を食べながら他愛ない話をするのだった。
「うーん、いい感じイィ」
葵が帰って、夕食を準備していると部屋を飛び回るドムエムが悶えながら何かを言っている。
「何がいい感じなのさ」
雅海が聞けばドムエムはピルピル飛びながら喋る
「だってぇ、女の子の部屋で気兼ねなく楽しくてお話、凄く雅海様を気にかけている様子だし、話題が尽きてもそれぞれ好きなことして心地良い空間!なーんでつきあってないのぉ?と思ったけどぉ、片付けべたがまず足引っ張ったよねぇ最初少し赤くなって女を意識してる感じだったのに勿体なぁい!!」
ドムエムの言葉に雅海は驚く
「え?葵赤くなってた?」
「鈍感なところも惜しいねぇ」
うっと雅海は言葉に詰まる
「いや、着てみたら身体のラインが出すぎてて普通に振る舞うので精一杯だったんだよ」
雅海の言葉にドムエムはふわんふわん空中でクロールをしながら答える
「一番手っ取り早く女を出せたでしょお?その後でだめだったけど、でもちょっと目のやり場に困ってたみたいだけどねぇ」
「マジか」
雅海はさっきの葵を思い出すが確かにそわそわしてたような気がする。
夕食を作り終えて机に着けば、ぽすんとドムエムが降りてきてホッケのひらきから少し身を取って食べながら言う
「さぁここかりゃがほんはんらよ」
「口片付けてから喋れ、何も聞き取れんわ」
「もっとほほって!」
何を言ってるかは分からないがめんどくさそうなので無視をする
するとごきゅんとホッケを飲み込んで喋りだす
「うふ♥放置プレイもか・い・か・ん♥」
気持ち悪さに食事していた手も止めて引いた顔をすれば、あぁん♥いぃん♥なんて身悶えるので目にしては駄目だと食事に集中する
雅海が食事に集中して得られるものが無いとわかるとドムエムは、話の続きをする。
「とりあえず、同性みたいな友達から女性の友達の意識に変わったところでここからが本番だよーん」
「何すんの?」
雅海が聞けばふっふっふーとドムエムは得意げに笑うのだった。
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