第二章

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第二章

山の奥にある遊園地はいつも多くの子供連れで賑わっていた。山脈の壁は遊園地を覆うように囲み、外界の空気を遮断していた。そのため、遊園地には独特な空気がいつも漂っていた。 ユリユリ遊園地ー今から約四十年前、欧州文化が空前のブームとなり、この小さな遊園地はオープンした。ジェットコースターもなければ観覧車もないこの遊園地の名産は、遊園地の端に建てられたサーカス劇場だった。 娯楽に飢えた村の子たちは週に一回とも言えるペースでサーカスに通っていた。 「ソラさん、出番ですよ」 サーカスの支配人は楽屋の扉を開けソラさんに知らせた。サーカスを取り囲む百合の花の香りが鼻に入ってきた。なぜサーカスに百合の花なのか。なんとなくわかったような気もした。 (ここにいると人は人でなくなる) 百合の香りはそれを知らせる合図だった。 ソラさんはピエロのお面を被り、鼻を赤く塗った。 ここでは私は笑われ者。
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