3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
第四章
失敗してしまったピエロは多くの暴言を受け取った。
「これだから女のピエロは」
「死んだか!?面白くなった」
すべて無視。それがピエロにできるせめてもの抵抗だった。
「ソラさん、大丈夫か」
支配人の心配の声も雑音にすぎなかった。
誰も私を助けない。
「ソラさん、おい、ソラさん」
雑音はバックグラウンドとなり一人の男の声がピエロに届いた。
「みさとさん」
力を振り絞って精一杯の返事をした。
その後、どうなったかなんて覚えてない。
恐らく多くの暴言を浴びながら病院へと運ばれたのだろう。
でも別にいいんだ。
ピエロは落ちたくらいで傷つかない。骨を折っても傷つかない。
まだ夜が明けたばかりの白い朝、退院の日がやってきた。あれから5日間お休みをもらった。
「これ、みさとさんから」
看護師さんはみさとから受け取った赤いカーネーションをソラさんに渡した。
病院の窓から入る海の塩の匂いが混じった清らかな空気は細かった。
窓を全開にしたいところだが、自殺防止で開けることができない。
ピエロになってから、百合の香りかこの嫌味ったらしい香りしか感じない。
お前はなんのために生きてるんだ。
昔お父さんから浴びせられた罵声が蘇る。
なぜピエロになる。
幸せになるためにお前は産まれてきたんだぞ。
幸せは一人じゃ作れないんだよ。
と独り言のように反抗した日も覚えてる。
最初のコメントを投稿しよう!