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「命を投げ出すのは一見簡単なようで、実は難しいのです。生きていれば辛いこともあるでしょう。でも、少しだけ逃げ出すのを待っていただけないかと」
「勝手なことを言わないで。他人のあなたに何がわかるというの」
「わかりますよ。あなたは今、苛立っていらっしゃいます」
この状況でにこやかに笑っている。わざと煽っているのか、そうでなければ空気を読めない無神経な性格なのか。
「生き急ぐも死に急ぐも、不幸の始まり。長い人生なんですから、焦る必要などないのですよ」
彼女は手にしていた革袋を開いた。甘い香りが漂ってきて、思考が遮られる。
「おすすめのおくすり、試してみませんか」
わたしの前に漆塗りの皿が差し出された。その上に、形の違う薬が三つ並べられている。
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