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「薬祖神様に何をお願いしようか」
とある神社に訪れた俺は、そこが薬祖神が祀られていることを知った。
三連休ともなれば皆考えることは同じなようで、多くの人々が列を作って順番に薬祖神に向けて願うのだ。
『薬の神様に願うことか……』
俺、宮森和也は高校2年生の夏に様々なことが重なって、気づけば家族と神社へ訪れていた。
「ここには薬の神様が祀られているよ」と父親から教えてもらったのはいいが、健康男子の俺にとってはあまり縁がないのではないかと思ってしまう。
少しずつ最前列の人々が変わっていって、5円玉が転がり落ちる音や、手の叩く音が大きく聞こえるようになってきた。
「どうしよう……」
悩んでいると、目の前のお婆さんが頭を下げて願った後に、俺に対して軽く会釈をして立ち去って行った。
薬の神様だからと悩んだところで、ここまで来てしまった以上何かを祈らなければ失礼となるだろう。だとしても、薬の神様に向けて「好きな子が振り向いてくれますように」なんて願っても叶えてくれはしないだろう。
「これからも健康でいられますように」とでも願えばいいのか……?
そんなことを考えてた末に、「結局、何を願っても努力するのは自分だ。神様は叶えてくれりゃしないだろう」ということで、思い浮かんだことをそのまま願うことにした。
『万能な薬が存在するのであれば、欲しいです』
まぁ、そんな物があるのであれば皆使っているだろう。列を作るほど多くの人達の願いを全部把握するなんていくら神様でもできないであろうと、そんなことを願ってみた。
「疲れた……」
連休だからと色々な所へ出掛けて、帰ってくれば楽しい1日から現実に戻される。「明日は平日、ということは学校」と一度思ってしまえば、薬祖神様に何をお願いしたかなんて忘れて、眠りの世界へ意識は飛んでしまうのだった。
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