神が与えし願い薬

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「ん?」  気づけばカーテンの隙間から太陽の光が漏れていた。重い瞼を開ければ薄暗い空間と天井が広がる。  脱力した右手に意識を向ければ、何か違和感を感じた。筒のようなものが乗っている感触がして握ってみると、それが中に粒の入った白い瓶というのを音で認識することができた。  自分の手に握られている瓶を見れば、それが夢の中ではなく現実世界での出来事だったと錯覚させられる。 「でも……」  とは言っても瓶が目の前にあることは現実だ。  しかし、副作用のことを思い出せば使うに戸惑ってしまう薬を渡されてどうしろと。 「考えるか」  何と言っても神様が与えてくれた物。副作用は難しいにしても、万能薬を願ったのは自分だ。使い所はあるだろうとして、おくすり魔法瓶を俺はバッグに入れて登校するのだった。 「おはよう」 「お、おはよう〜。今日は眠そうだね。宮森」 「近澤(ちかざわ)は相変わらず元気そうだな」 「そう?」  教室に入って早々、明るい言葉を投げ掛けてくるのは幼なじみの近澤(ちかざわ)結音(ゆね)。  誰かさんの机の上に座って、足を揺らしながら友達と話をしていたようだ。 「全く、毎朝俺の机に座りやがって」 「いいじゃん。早い者勝ち」  誰かさんというのは俺の机だ。毎朝教室に行けば当たり前のように座っている。そんな座っている彼女の隣に行って、机のフックにバッグを掛けると、俺は他の友達の方へ行って話をする。それがいつもの日常だ。 「来週テストあるんじゃね?」 「あ、そうじゃん」 「何もしてないわ」  話をしていれば朝から憂鬱な話題ができてしまった。だいたいこういう時は「何もしてないわ」と言っているやつの方が影で努力していたりするものだ。 「忘れよう」  一方の俺は、すぐ現実逃避をしてしまう。  そもそもテストで良い思い出なんてない。赤点こそ取ったことはないが、だいたい内容を見れば「解けただろ」と後悔して終わることが大半だ。 『来週はテストがあるから、皆準備はしておくように』  でも、忘れさせてくれないのが先生だった。人の心を読んだかのように、一言そう言い残して授業を終わらせて教室を後にする。  余計なのだよ、一言。
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