夢使いの仕事

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「早く……早く、見つけないと」 「見つけるって何を?」 「宝物。お母さんね、トレジャーハンターのお仕事を受けたの。それでこの街のどこかにキラキラの心っていう宝物があるって聞いてやってきたんだ」 「トレジャーハンター? お母さんが?」 「ふふっ、そうなの。でも見つからないんだ。ずーっと探してるのに」  アオは苦しそうに笑うと、近くのゴミバケツを開けて中をあさり、暗闇に沈んだ建物と建物の隙間をのぞきこんだ。その間も雨は降り注ぎ、アオの体は寒々しいほどに濡れていく。 「そんなところにキラキラの心があるはずないよ!」 「わからないじゃない。探してみないと……」 「わからなくない! キラキラってもっとワクワクドキドキするものだよ。汚いゴミバケツや怖い路地裏なんかにあるわけない。もっと明るくて綺麗な場所にあるんだよ!」 「でも、この街はどこも雨なんだよ。明るい場所なんてどこにも……」 「あるよ。雨のない晴れた場所ならどこにだって!」  ポーチの中の薄紫のアロマの瓶を手にし、メイムは雨のない場所を強く思い浮かべる。 「学校で習った。雲の上はいつでも晴れてて、絶対に雨は降らないの」  スプレーを噴射し、メイムは唱える。 「我が心を映し出せ! 雲の上へ通じる光のはしご、降りてきて!」  涼しげな香りが周囲に充満する。瓶から放たれたミストは雨に負けることなく空を目指し、分厚い雨雲に穴を開けた。太陽の放つ黄金色の光がカーテンのように差し込み、空と地上をつなぐ光のはしごとなってメイム達の前に降りてきた。 「マジョラムの香りだね。天命を思い出す時っていうメッセージを秘めたアロマだから、空への道が開けたんだ」  解説するバディフの横で、アオは吸い寄せられるように足を進めた。 「天使のはしご……なんて綺麗」 「お母さん、こっち。一緒に上ってきて!」  はしごに手をかけ、するするとのぼっていく。雲の上に顔を出した瞬間、視界がまぶしいほどの光に包まれる。やがて目が光に慣れてくると、そこには見渡す限りの雲海と青空が広がっていた。
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