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「驚いた。こんなに青空が広がってたなんて」
「ここならきっと探してる物があるよ。ほら、お母さん」
水遊びをするように雲をすくって放つと、雲がキラキラとした綿毛になって遠くへ飛んでいった。アオも照れくさそうにしながら同じことをする。それから雲の上にダイブし、ふかふかの表面をころころと転がった。アオも一緒に転がり、大きな口を開けてあははと笑った。
「懐かしい。子供の頃、部屋一面に敷いた布団の上でこんな風にして遊んだっけ」
「お母さんにもそんな頃があったの?」
「お母さんだって昔は子供だったんだから。その頃のお母さんの部屋は空色の壁紙でね、よく空を飛ぶ空想をしてた。ベッドの上を雲のトランポリンだなんて言いながら飛び跳ねたりして。ワクワクしたな、ドキドキしたな」
アオはハッとして体を起こす。つい先程までずぶ濡れだったはずの体はすっかり乾き、暖かな風に髪が揺れていた。
「そうだ、キラキラの心……。こういう気持ちだったんだ。明るくて温かくてぽかぽかするこの感覚。ずっと忘れてた。私、子供達にこういう気持ちになってほしくて、おもちゃを作ってたんだ」
「もしかして、今の仕事を選んだ理由?」
「うん。恥ずかしい話なんだけどね、お母さん、次にどういうおもちゃを作ろうかで悩んでたんだ。だからトレジャーハンターになってキラキラの心を探してたの。でも、私ったらバカみたい。宝物がゴミバケツの中になんてあるわけないのにね」
アオが弾けるような笑みを浮かべて立ち上がる。背負っていたリュックから大きな袋を取り出し、気合を入れるように大きく伸びをした。
「よ~し! ここにある雲と、お日様の光と、綺麗な空気、全部持って帰るぞ~! 他にも何かいいものがないか探さなくっちゃ!」
ポーチから黄色のアロマが飛び出し、振りまいてくれと言わんばかりにメイムの手に収まった。早速ヘッドを押して周囲にミストを吹きかける。唾液がじわりとあふれてくる酸っぱい香り、これは教えてもらわなくてもわかった。レモンだ。爽やかなミストはアオを中心に光の輪となって広がり、誰もいなかった雲の上に宝石の花が咲き乱れた。
「すごい。雰囲気がこんなにも変わった!」
「夢主の気持ちはそのまま夢に反映されるんだ。純粋な喜びを思い出してやり直す、レモンの持つメッセージがしっかり効いたんだね。メイムのお陰でアオの心がこんなにも明るくなったってことだよ」
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