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家に帰ったメイムは、自分の部屋に行き、学習机に座ってポーチを開けた。ポーチの中にはマグカップくらいの大きさの白い装置と、目薬くらいの大きさの小さな瓶が三本入っていた。瓶を手に取ってじっくり見てみると、瓶の中に風になびく草原と星空が見えた。小さなイラストを封じ込めたのかと思ったが、暫く見ていると流れ星が走り、カーテンのように揺れるオーロラまで現れた。
「うわぁ、どうなってるんだろう? きれい」
続いて、白い装置の方を見てみる。ディフューザーという小型の加湿器のようだ。鼻の短いゾウのような形をしており、スヤスヤ眠るつぶらな目が描かれている。ポーチの底にはメッセージカードのような葉っぱ柄の説明書が入っていた。
「夢アロマの使い方。まずは香りをかぎ、アロマに込められたスピリチュアルメッセージを感じて。あなたの心はいつでも正直者。心に響くメッセージと出会ったなら、素敵な夢が見られることでしょう……?」
アロマといえばテレビで見たことがある。緑や茶色の瓶に入っていて、香りをかぐとリラックス効果やリフレッシュ効果が得られるという。しかしメッセージとは何なのか、香りをかげば感じ取れるというが……。
「あ、いい香り……。チョコミントのアイスにも似てるかも」
フタを取ってかいでみると、爽やかなペパーミントの香りが鼻の奥にふわりと広がった。涼しげな香りが風となって、体にたまった熱気を吹き飛ばしてくれるようだ。アロマの効果だろうか、不意にあくびが出る。
「お母さんはまだ帰ってこないし、ちょっと昼寝しちゃおうかな」
ベッド横の窓辺にディフューザーを置き、背中にあるフタを開けて、百ミリリットルの水とアロマを三滴入れる。コンセントをつないでスイッチを押すと、鼻の穴から白いミストがふき出し、ペパーミントの香りが優しく部屋に広がった。よく眠れそうだ、そう思った時にはメイムの意識は眠りの中に落ちていた。
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