不思議なアロマ

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 メイムは見渡す限りの夜の草原にいた。頭上には満天の星空が広がり、宝石を散りばめたような星明りが淡く地面を照らしていた。さらさら、さらさら、風が草を揺らす音が優しく耳をなでる。流れ星が三つ、長い尾を引いて空を駆け抜けた。 「これって、もしかしてアロマの中に浮かんでた景色? すごい! あのアロマを使うと、アロマに映った景色の夢が見れるんだ!」 「その通り!」 「え?」  小さな子供のような声がしたかと思うと、鳥のような羽をパタパタとはためかせて白い生き物がやってきた。ずんぐりとした体にゾウのような短い鼻、メイムはあっと声を上げる。 「あなた、アロマディフューザーのゾウさん?」 「ゾウじゃなくてバクだよ。ボクはバディフ、今夜の夢の案内人だよ。よろしくね」 「夢の案内人って?」 「夢アロマを思いっきり楽しんでもらうための相棒(バディ)ってところかな。夢の中で何がしたい? 空の中を泳ぎたいでも、オーロラの上でサーフィンしたいでも、なんでも言って」 「そんなことも出来るの?」 「うん! だってここは夢だもの」 「それじゃあ、両方やりたい! あと、お星さまのドレスが着たいな。出来る?」 「えへへ、任せて。それ!」  バディフがゾウのような鼻を上に向けると香りのミストがふき出し、メイムの体を包み込んだ。するとメイムが着ていたオレンジ色のパジャマが、星のようなキラキラ模様のついた黄色いドレスに変わり、頭にも星の輝きをたたえたティアラが現れた。バディフがもう一度ミストをふくと、メイムの体が羽根のように浮かび始める。そして風に乗るようにして星の散りばめられた空へと舞い上がった。 「わぁ~! わぁ~~~!!」  それからは全てが叶った。星空の中を泳ぐことも、星を指先で弾いて音楽をかなでることも、流れ星に乗って空を駆けることも、強く想像すればなんでも出来た。バディフにならって星のかけらを口に放り込んでみると、とろけるような甘い味がした。星を紡いで作ったボードで、波音を立てて迫りくるオーロラの上を何度も滑った。星と星をキラキラの線でつないで、空に大きくケーキの絵を描くことも出来た。 「あー、楽しい! 好きな夢が見られるなんて、最高のプレゼントだよ!」  星のサーフボードの上に寝転がりながら、メイムは空に向かって叫び、大声で笑った。
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