夢使いの仕事

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「ペパーミント、ローズ、ベルガモット……。豊かな香りを持つアロマは様々な力を秘めていて、薬としても使われることがある。昔は自然のことわりを理解し、生活に役立てる人は魔女と呼ばれていたわ。特別なアロマを使って悪夢をはらう夢使いも魔女と言えるわね」 「魔女なのにアロマ? 魔法を使うんじゃないんですか?」 「おとぎ話に出てくる魔女とは少し違うかもしれないけれど、アロマの力だって侮れないのよ。メイムちゃんがリトルメアを見る力を得たのは、ペパーミントの入った夢アロマを使ったからだわ。ペパーミントには『目覚めの時』というスピリチュアルメッセージが込められていて、使った人の直観力を高める効果があるの。もちろん、ペパーミントの香りをかいだら誰でもリトルメアが見えるようになるわけじゃない。メイムちゃんに才能があったから見えるようになったのよ」 「才能があるなんて、嬉しいな。どうやったら夢使いになれるんですか?」 「まずは沢山のアロマを用意しないと。それから小さな相棒の力を借りましょう」  アタエはバクの形のディフューザーを手に取り、頭を優しく撫でた。 「バディフ、いつもの姿にお戻り」 「え?」  アタエが語りかけるとディフューザーがブルブルと震え出し、ふわりと浮かび上がった。空中で一回転して手の中に着地すると、機械ではなく小さな生き物に変わっていた。ずんぐりとしたゾウのような鼻の生き物はメイムを見るなり小さな悲鳴を上げて、アタエの首元に隠れた。 「ああー! 夢の中で見た子! ウソ、本物?」 「バクという妖精よ。バディフ、隠れてないであいさつしなさい」 「こ、こんにちは……」  首元から顔をちょこんと出し、バディフはおじぎする。
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