抜け出したい日常

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抜け出したい日常

 人波の流れに乗って歩きながら、ぼんやりと左右を見る。  前を歩いている女性が急に立ち止まった。  身体を横に開きながら躱して歩き続ける。  結局ラーメン屋に入った。  店内が明るくて安い。  安いチェーン店は注文すればすぐに作ってくれる。  そして大盛にしたりトッピングしたりセットにしたり、ある程度の選択肢がある。  硬め、柔らかめなどメニューにないカスタマイズもできる。  英和にとっては大盛にするか餃子をつけるかの2択でしかないのだが、選択肢が存在する事実が重要だった。  店内は奥行きが広いのだが、カウンター席は入口付近に固まっている。  一応奥まで見渡してから、入口の傍に座った。  前のお客さんの食べ残しがテーブルに乗ったままだった。 「すいません」  イントネーションから中国人と思われる店員が、サッと片付けた。  一応メニューを見てからタンメンを大盛りにする。  油が多いラーメンのバランスを取るために、野菜を乗せたタンメンにした。  いつも同じことを考え、タンメンを注文する。  時計を確認すると、昼休みが終わるまでに時間があった。  運ばれたラーメンを急いで食べると、ポイントで支払い外に出た。 裏通りに入ると、商店街の休憩所がある。  職場に戻るとすぐに仕事が降ってくるので、息抜きをしに寄っていくことにした。  プラスチック製の簡素なベンチに腰かけ、スマホを取り出す。  そういえば今日のニュースを見ていなかった。  見出しを素早く確認してから、視線を上げる。  奥のカウンターにいるおばちゃんが、緑茶を淹れて持って来てくれた。 「ごゆっくり」  ニコリとしてから、定位置に戻り入口をじっと見ていた。  何もかもが予想通りに進む。  もうすぐ午後の仕事に戻らなくてはならないが、またルーティーンワークが待っている。  やらなくてはならない仕事であふれ、 「とりあえず片付けなくては」  と思っているうちに夕方になるのだろう。
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