マーブル

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 学校帰りに郵便受けを開いたら、一際大きい封筒が撓(たわ)んで入っていた。完全に折り曲げないように注意を取り出して宛名を見ると、「在家 菜々美(ありいえななみ)・瑠々美(るるみ)様」と書いてある。 「ルルと私に?」  連名での郵便物なんてそうそう届かない。中学校だって案内は分けて送られてくる。封筒をひっくり返して差出人の名前を確認すると、「一楠異能学園」と判子がされていた。聞き覚えのない名前に首を傾げる。私たちが通っているのは「私立葉山中等学校」だ。ちなみに、葉山中は中高一貫校で、来年の四月には私たちは高校に進級する。中学三年生に向けた学校案内だろうか。一体どこから住所が漏れたのだろう。封筒を脇に抱えてスロープを上がると、ドアの鍵穴にキーホルダーがついた鍵を差し込んだ。 「ナナ!」  声がした方、後ろを振り返るとルルが立っていた。 「お帰り。早いね」私は鍵を回してドアを開けながらルルに言う。 「今日は部会だけだからさ。ナナもお帰り」  ルルは「ありがとう」と続けて、私が開けたドアを潜(くぐ)った。顔は全く同じなのに、こんがり焼けた肌と、本来真っ黒の髪は茶色に近い。どちらも、ルルが所属する水泳部の夏の部活に打ち込んだ賜物だった。毎年の事だけれど、夏休み明けのルルは太陽みたいに眩しい。世界の色は目前の秋や、その先の冬に向かって彩を失っていくけれど、ルルの皮膚や髪の毛は、あの灼熱の太陽の熱を留めて輝いている。
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