05 時計

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両親と兄は…射殺して殺された。 指示した犯人は見つからないまま、 隠蔽された事件。 残された俺は、手を上げた祖母に引き取られることになったけれど…。 犯人が誰なのか凄く気になったし、 その犯人を凄く恨んでいた。 でも、もし……。 全ての人達の時計がここにあって、 全てを知るコニーなら、分かるのではないかと思った。 「 コニーは…知ってるのか。俺の家族を殺す事を指示したのが、誰なのか… 」 「 うん、知ってる。でも…それを知ったところで君の時計は動かないと思うけどね 」 「 っ、それでもいい!教えて欲しい…ずっと気になっていたから… 」 先を歩いていた彼に問えば、俺の言葉を聞き、左手を横に向け、その手の中にとある懐中時計を持てば、軽く投げ回してきた。 「 !! 」 宙に浮いたようにスッと手元にやって来た懐中時計を見れば、沢山の凹凸があり壊れている。 「 だって、君が殺してるから 」 「 っ……。そん、な…。チャールズ…叔父さん…だなんて… 」 膝から崩れ落ち、其の場に座り込んで動く事のないボロボロの時計を握り締めた。 「 なんで、仲良かった…はずなのに… 」 家族皆で食事会もしてたし、両親と仲良く話してる雰囲気もあった。 俺にだって優しく……っ…。 考えれば、プレゼントを買ってきてくれたのは… 俺にだけ、だった君がする…。 「 チャールズ•ドゥ•フォスターは、君の実の父親だった。けれど…君が生まれて直ぐに妻は亡くなり、酒に明け暮れていた彼は、子育てが出来ないと…君の父親に預けた 」 亡くなった人達の時計を取り出して、それを俺の方に投げてきた。 浮遊したまま、周りに並ぶ時計には、見えないはずの過去が映し出される。   「 君の父、ジャン•ドゥ•フォスターはチャールズを父親として教えず育てた。それに対して、まともに仕事を始め、収入も安定していたチャールズは、君を返して欲しいと度々言い合うが、二人は其れを否定し続けた 」 コニーの言葉通りに、時計には彼等の記憶が刻まれたように、それぞれに声を張った。 ゙私が、精神的に落ち着くまでの間…育てるだけの話じゃなかったのか!?゙ ゙御前のように酒クセの悪い男に、渡せるわけはないだろ!!゙ ゙そうだわ!もう、彼はウチの子なの!゙ ゙妻が唯一残した子なんだ!返してくれ!!゙ その言葉に…。 どちらの元で生きていれば、幸せだったのか分からなくなった…。 本当の父親か、それとも…実の子供だと知らずとも、愛してくれた両親なのか…。 「 月日は流れ、チャールズには、子供を取られた復讐心が募り、金を渡せば殺してくれそうなホームレスを雇って、三人を射殺させた。君だけがいない日に… 」 「 っ、学校帰りに…叔父さんの家に寄った日だ… 」 その日、食べさせたい都会のお菓子があるからって…事前に呼ばせてもらった。 俺は嬉しくて学校帰りに叔父さんの所に寄って、お菓子を食べて… 晩御飯は家族と一緒に食べる事を約束したからと…帰ったんだ…。 でも、帰り際の会話を覚えてる。 ゙何かあれば、いつでも私を頼りなさい゙ ゙うん!そうする。ありがとう、チャールズ叔父さん゙ 当時は、いつもみたいにプレゼントやお菓子を買ってくれる程度かと思ってたから、深く気にしなかったけれど… そんな意味合いがあったなんて…。 「 でも、それならなんで…。家族が亡くなった後…引き取り手として声を上げてくれなかったんだ? 」 「 彼は上げたよ。けれど…弁護士は過去の問題を指摘し、君の引き取り手になる所有権が無い事を主張した 」 「 酒癖が…悪いってだけで……? 」 「 そう。未成年への暴行が無いように…。その結果…彼は、君に叔母が虐待してるのを知って激怒し、揉み合いになった頃に…何も知らない君が来たんだ 」  「 強姦しようとした、わけじゃないんだ… 」 ソファに押し倒されていたし、お互いの服が乱れていたから、てっきり強姦されかけてるのかと思って勘違いしたんだ。 「 じゃ、俺は……自分を、大切にしてくれた人を……殺したんじゃん……っ。チャールズ、叔父さん……ごめん、ごめんなさい…… 」 あの日から、流れる事がなかった涙が溢れ出て、 彼の時計を強く抱き締めて、声を震わせて泣いた。 「 嫉妬に狂った親と、何も知らない子供が起した悲劇。止めることの出来ない歯車に…時計の針は進むしか無かった。ホームレスを雇わなくても、失敗しても…彼の手で両親と兄は殺されていた…。彼の殺意は…誰に求められない 」 俺が、父親と知っても… 俺の両親は、手放そうとしなかっただろう…。 一度、酒癖が悪いことを見たのなら… 真面目な二人が、渡す訳がない。 ルールを強く守っていた二人だからこそだ…。 「 っ……。じゃ、俺に…どうしろって…。愛してくれた両親も、叔父もいない…。一生…罪の重さを抱えて生きていくしかないのか…!? 」 「 そうだね。君は強く反省してる。でも、君の時計は動かない…大切な者を多く失いすぎたから…だから俺は考えた。此処なら時間がある。君を大切にして、針を動かせる人物が現れるんじゃないかと… 」 反省しても、誰も帰っては来ない…。 俺は…大切な人を殺してしまったことんだから…骨をカチ割って、息の根が止まるまで…。 叔父は…父は、何を思ったのだろうか…。 どんな思いで、俺に殺されたのか…。 それを考えるだけで…涙が止まらない。 「 こんな、狂って…イカれた…場所で、そんな人物…現るわけ無い… 」 いつの間にか手から、彼等の懐中時計は消え去り… 子供のように泣く事しかできない俺の前に、コニーはやって来て、そっと頬に触れた。 「 人を殺し、殺されたキミも同じ位気が狂ってる。愛されたいと強く願う欲を持つ。…彼等となんら変わらない。何が違うっていうんだ?人と違う、耳や尻尾も…羽もある…。君は彼等と同じ立場なんだよ 」 「 っ……!! 」 イカれてる…壊れてる…可怪しい。 そう思っていたが…俺も、人を殺した同罪じゃないか。 死ぬ事も経験して… 愛されたい欲に特化して…。 彼等から見たら… その欲が強いことも、イカれてると言えるのだろう。 同じだと言われて…酷く納得して…。 涙は止まり…奥歯を噛み締めた。 「 欲に素直になりなよ…。そうすれば、君の時計は動き始める 」 コニーはそっと額へと口付けを落とし、頬に触れていた手を離して立ち上がり、黒い爪が伸びた左手を向けてきた。 「 試しに俺と、交わってみる?性欲は一番、全ての欲に直結するからね 」 「 …………っ 」 目の前のコニーは…時計塔の番人であるコニー。 でも、彼のもう一つの仕事は…宰相としての顔も持つ。 ここで手を取って交わっても、 俺は…宰相としての彼を求められるかと聞かれたら…疑問になる。 向けそうになった手を、小さく握り締め胸元に置く。 「 俺は…優しいコニーしか、知らない…。もう少し…宰相としての、君を知ってから…が、いい。今ここで…手を取ると、弱ってる…心は、簡単に貴方を…好きになりそうだから… 」 「 君ならそう言うと思った。いいよ、そうやって少しずつ自分の心に素直になるといい。そうすることで、針は動くからね 」 「 ん……ありがとう… 」 コニーにとって、行為はそれ程重要な事でも無いと思った。 彼ば試しに゙と言ったのだから、俺が好きになるかもしれない… その候補に入ってあげると言うだけで…。 心から、俺を愛してるわけじゃない。   今抱かれても、浮かれた頭には全てが愛情として受け取ってしまうから…。 少し、考えなくてはいけない…。 「 じゃ、迷わずお帰り。君の帰る場所へ 」 片手を俺の背後へと向けた為に、振り返れば閉じていた扉があった。 引き込まれるように、ふらつく脚に力を入れ立ち上がる。 「 ありがとう…。また、宰相の時にでも会うね… 」 「 うん。サラッと殺されないように、処刑の仕事が無いときはこの姿で彷徨いてるから、また俺からも会いに行くよ 」 歩き出した俺に、手を振った彼を見てから光のある方へと歩いて行く。 「( 此処での生き方は決まった…。もう少し…頑張ろう )」 出入り口に行けば、一歩踏み込んだ瞬間に景色は変わる。 「 あ、ここ…… 」 帰ってきたのは、エースが使っていた寝室だ。 「 俺の部屋に変わってるから…。実質此処が、帰る場所なのかな… 」 俺が此処で過ごすには… まずは、自身の本当の゙心゙を知らなくてはなと思った……。 〜 ここまでで終わり 〜 すみません! 続き書く余力残ってません…(汗) また、続きが書きたいときは スター特典等にいたします! 観覧、ありがとうございましたm(_ _)m
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