1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
『みてみて、A太!向日葵畑だよー!』 『おおー!めっちゃきれいだな。でもほんとすげぇ量の向日葵…』 『ね、本当に。一面金色だよ』 『金色?俺には一面黄色にしか見えないけど』 『ふふ、めっちゃ不思議そうな顔してんじゃん。 えーっなんで金色に見えるのかって?それはね___ 』        そこで、目が覚めた。  暫く天井を見つめたあと、深い瞬きをしながら重い上半身をゆっくりと起こす。閉めてあるカーテンから漏れでた光が、ゆらゆらと湿っぽい俺の部屋を細く照らしている。 「…」  アイツはあのあと、なんて言ったのだろう。何度もみるあの夢はいつも大事なところでぷつりときれていて、目を覚ますとそれはじんわりと静かに俺の記憶から消えていってしまう。壁に掛けてあるフォトフレームに視線を移す。幼かったころの俺とアイツが満面の笑みでピースしている写真が、そこには在る。  俺には一人の幼なじみが居た。勉強も運動もいつもトップクラスで、おまけにとても優しい。俗に言う優等生ってやつだった。勉強の出来がとても悪かった俺は、アイツにいつも勉強を教わっていた。風の噂のため確かではないのだが、恋人もいたらしい。もう最強ではないか。  …だが、そう。俺にはそんな最高の幼なじみが「居た」んだ。12歳、突然だった。俺とアイツは永遠の別れを告げることになる。  写真のフレームが滲み、幼い俺とアイツの顔が歪んでいく。あ、と思う頃にはもう涙が頬をつたっていて、俺は急いで両手で拭う。あれから2年たってもまだ慣れない。「ゔぅ…っぇぐ……っ」布団に顔面をうずめながら、無意識に嗚咽をもらしながら、その時をやり過ごす。だめだ、けじめをつけなきゃいけないのにと思いながら咳き込む。時計の秒針はかちかちと音をたてながら、時の流れを刻んでいた。  「気晴らしに外にでてみるのはどうだ?」 母がいきなりそういうので、俺は「えっ」と声を出してしまった。朝食は食べないとだめだ!と俺の部屋にいきなり入ってきた(もちろんノックはない)母に、無理矢理ダイニングテーブルに連れてこられたため今リビングに居る。日光がうすいカーテン越しに部屋にはいってきて、すごく明るくてめまいがした。 「いま8月の半ばだろ?めちゃめちゃ暑いけどさ、夏休みだしせっかくだから外の空気にふれるのも良いかもしれないぞ」 母はそういいながら味噌汁をよそい、食卓にあるロールパンの横に かた、と置いた。 「さすがお母さんだ…相変わらず朝食の組合せすごいな、ロールパンにお味噌汁って」 「ん?どれも胃に入ればいっしょだろ、てか話そらすな」 「あー、うん。良いかもしれない。外に行くの」 「おう!朝食食ったらいってきなー!」 「いやあの、食欲ないんだけど…まあいいか」 男勝りな母の元気に負け、俺はしぶしぶお味噌汁を口に運ぶ。……おいしい。ロールパンは外から帰ってきたら食べようかな。 「じゃあ、ちょっと外出る準備してくる」 「はーい!」 顔面を洗い、しゃこしゃことはみがきをし、服を着替えた。Tシャツの袖に腕を通しながら、鏡で自分の顔面をみたときの衝撃を思いだしていた。うーん、俺ってあんなクマすごかったっけな……。 「いってくるね」 「おう、いってらっしゃい!あ、そうだこれ」 そう言って母は麦わら帽子を俺の頭に無造作に被せた。 「…服に合わないんだけど。麦わら帽子」 「外まじであちーからさ。暑さ対策ってことで!」 「あ……なるほど、ありがとう」 「気をつけてなー!」 サンダルを履き、重いドアを開ける。 驚いた。長い間外にでていなかったため気づかなかったのだが、自分の知らない間に外は本当に夏になっていたのだ。目の前にひろがる澄んだ空のあお、木のみどり、頬をかすめるあつい風。そんなまぶしい風景を前に思わず目を細めてしまう。すぅ、と空気を吸うと微かに夏のにおいがした。 「……すげえ」 まるでアイツがいた夏と同じではないか。 「…向日葵、みにいこうかな」 ふいにアイツと最後に行った向日葵畑が頭をよぎった。まだあの場所はあるのだろうか。気づいた頃にはもう、俺は歩きだしていた。 いやまて、それにしてもまじで暑いな。 家から出て10分くらいたったのだが、あつすぎて目の前がぐらぐらする。汗が滴る。ここまで来る途中、犬にギャン吠えされたのだが…熱くて苛々してたんだな。わかるぞその気持ち。たしかにやばいよこれは。……アイツがいた夏はここまで暑くなかった気がする。 「…?」なんか麦わら帽子に違和感が。 「?!」なんと、何故か帽子の網目に150円がはさまっていたのだ。どういうことだよ。お母さん、しっかりしてくれよ。 「ええ…(困惑)まあいいか、自販機で水でも買おう」 がこん、と音をたててつめたいペットボトルがおちてきた。水を買ったつもりだったがでてきたのはサイダーで、なんかもういろいろどうでもよくなってごくごく飲んだ。木陰に自販機があってよかったと心からおもった。 「そういえばアイツ、炭酸苦手だったよな…懐かしいな」 しゅわしゅわするのが嫌なんだ、と困ったように笑い、その隣でお構いなしに炭酸をがぶ飲みする俺を、びっくりしつつもきらきらした顔でみつめていたかつてのアイツが心にうかんだ。 「…行くか」  でも本当に、思い返してみれば唐突な別れだった。 あの日。良い子はかえりましょうという帰りのチャイムが鳴り、アイツと別れる寸前 ___爆速でせまってくる車、 歩行者用信号機の青、 横断歩道、 ブレーキ音、 見開く目、 伸ばす手、 手、 悲鳴、 ____そして、無音。 気づいたらアイツは写真のなかにいた。向日葵じゃない花が周りにいっぱいあって、みんな泣いていて、俺はほんとに実感がわかなかった。くろい服をまといながら、しんぞうがどきどきして、なぜかアイツをころしたようなきもちにすらなっていた。 「ここだ…!」 足は目的地への道のりをしっかり覚えていた。着いた。目の前にひろがる一面の黄色がそこにはあった。いま俺が立っているところはすこし高台になっていて、そこから一面の向日葵畑が見渡せるようになっている。柵に手をかける。 「ほんと…ひさしぶりだ」 みえる向日葵畑の風景は、2年前と全く変わらないものだった。俺もなにも変わっていない。アイツのことをずっと忘れることができなくて、「明日にはきっと生きてるアイツにあえる」って信じ続けて、眠って、起きて、大切だった_だいすきなアイツのことをずっとずっと、ずっと願ってやまない。 「…っなんで、しんじゃったんだよ…」 気づいたら、そう声が漏れていた。 その時急に強い風がふいた。それまで穏やかな温風だったのに、なぜか突然強い風が吹き荒れたのだ。 「あ!…えっ」 そして俺の麦わら帽子をさらっていった。帽子は宙を舞って、向日葵畑をとおくとおくかけていく。 「嘘だろ!?」 俺は勉強はできなかったが、運動は得意だった。そのため急いで数段ある階段をおり、走りだし、帽子に追いつこうと向日葵をかき分けてすすむ。だがしかし、帽子まであと少しなのにぜんぜん掴めない。しかも、ずっと外に出ていなかったせいで体力もかなり落ちている。 ふいに、遠くにある小さくなった麦わら帽子がアイツと重なった。その瞬間、いままでのアイツとの思い出が溢れていく。 虫取り網をもってカブトムシを探しに行ったあの夏。 自転車で行った近場の海、群青色、入道雲、風鈴。 「……はっ、……っ」 勉強を教えてくれているときの真剣な目。 なびくうすいカーテン、生徒の声、チョークで一緒にばかげた落描きしたあの日、放課後のチャイム。 「……ぐ、っう、」 炭酸を飲んだときの涙目になったにがいかお、そのあとの困ったようにわらったかお。 些細な小さなことで喧嘩して怒鳴りあったあのとき。 「…っぇぐ…っは……っは」 帰り道に愚痴を言いあって笑ったあのじかん。夕焼け。 アイツの太陽のようなあかるい笑顔、あったかい手、ころころした笑い声。 そして、向日葵畑。 「……っげほっ…はっ……は……っぅえ"、」 『みてみて、A太!向日葵畑だよー!』 『おおー!めっちゃきれいだな。でもほんとすげぇ量の向日葵…』 『ね、本当に。一面金色だよ』 『金色?俺には一面黄色にしか見えないけど』 『ふふ、めっちゃ不思議そうな顔してんじゃん。 えーっなんで金色に見えるのかって?それはね___ 』 息を切らしながら、追いかけておいかけていく。涙も鼻水もぜんぶだらしなく垂れたまま、アイツのことをただひたすらにおいかける。 向日葵畑を抜けると、そこにはふかい水色の海が広がっていた。砂浜で足をとめ、下を向き、がくがくする膝を手でとめながら肩で息をする。    「一面の向日葵が金色にみえたのはさ、」 __聞き覚えのある声だ。    「きみとみた景色が特別だったからだよ」   __ゆっくり、 ゆっくり、かおを上げる。          「A太くん」 そこには___いま生きてるはずのないアイツが、俺の麦わら帽子をもって、居た。 「は、」 「ひさしぶり!」 「あ、え…」 「へへ、びっくりしたー?」 「……っ、いや、え?」 「やー、やっとこっちにこれたよー!もーさ、きいてよ大変だったんだから〜。なんかいろいろ手続きとかしなきゃいけなくて、それでこんなに時間かかっちゃって…」 「__の、」 「ん?」 「…ほんもの?」 「本物だよ………ってえ??!!!?!ちょっとまってどうしたA太くん、めちゃめちゃクマひどいしやつれてるけど?!てかめちゃめちゃ泣いてるし…!まってこれもしかして僕のせいか?!ハンカチハンカチ__ってそっか無いんだわあああどうしよ!!!」 わたわたしてるアイツとへたり込んで呆然とすわってる俺。状況がカオスすぎてついていけない。 「え………おまえ、なんでここにいるんだ…?」 「"なんでここにいるんだ…?"じゃないよ!お盆だからもどってきたの!今、お盆真っ最中でしょー?」 「あ、そういうこと」 「もー、相変わらず鈍いねA太は…。はいこれ、A太のでしょ?きれいな麦わら帽子だねー!」 「あ、ありがとう」 アイツの葬式のときも、あとから涙が込み上げてきてならなかったのだが、どうやらいまもそうみたいだ。思わず下を向いてしまう。服の袖でそれをぬぐう。 「A太くん?」 「……っ、あ…のさ、」 「…ゆっくりで大丈夫だよ。」 「う…ん、……っ俺、まじでお前がいな、くてつらかっ…た」 「僕もだよ」 「毎日寝る…前、明日お前が、あた…っ当たり前のように居ますように…って、願いながら寝た」 「うん」 「………奇跡っておこるもんなんだな」 「そうだね、」 顔を上げると、アイツと目があった。真剣な顔をしていた。なぜだかしらないが、アイツのおおきな目にたくさん涙がたまっていた。俺は、ところどころかすれる声を隠すように、背筋を伸ばし、大きな声で 「俺に、……会いにきてくれてありがとう」 そう言った。 瞬間、アイツは俺を抱きしめた。 ぜんぜんあったかくなかったが、たしかにきつく抱きしめていた。麦わら帽子が砂浜にぽすっとおちた音がした。なびく髪、波のさざめきに交じる小さな泣き声。 俺は思い出ごと、アイツを優しく抱きしめかえした。 「A太くん」 「ん?」 「しんでからさ、ずっとずっと…きみのこと考えてた」 「うん、」 「生きてるうちにA太くんとあーしとけばよかった、こうすれば良かったって後悔しかなくて」 「お前も後悔ってするんだな」 「……いやいやするだろだれでも…ってまってごめん鼻水やばい」 「ん、大丈夫だよ」 「ありがと………で、気づいたんだ」 「?」 「君のことがずっと前から好きだったって」 「……………、、、え」 「だいすきだったって」 「…………………、、、、、は」 「近くに居すぎてわかんなかったけど」 「…いやお前、恋人いるんじゃなかった?」 「…え!!?!!だれがいってたのそれ!!!!!」 「噂で聞いたんだけど」 「はああああ???!?!!!居るわけ無いでしょこんな僕なんかに!!!!!!!ひでえ噂だなそれ…いや信じ込むきみもひっどいけどさ……」 「……ふはっ」 「んえ?」 「ははは!」 「ちょ…何笑ってるんだよー!!なんかはずいんだけど!!!!?!」 今ぜんぜん信じられない状況のはずなのに、アイツは何も変わってなくて、やり取りが懐かしすぎて、泣いてるのにめちゃめちゃ笑ってしまった。あたま真っ白で、感情ぐちゃぐちゃで、でも本当にうれしくて、気づけばふたりで大笑いしていた。 「俺も実はお前のこと、けっこうまえから好きだったんだ」 「…………………ってことは僕たち両想いだったってわけ?!!!?!わあああああもぉぉぉ待って?!!!!生きてるときに告ればよかったわ……」 「俺は今からでもおそくないと思うけど…、またお盆にお前と会えるかもだし」 「えーっ遠距離恋愛ってやつ??それにしては遠すぎないか…?wま、現世とあの世を繋ぐような恋愛も最強にロマンチックだけどねぇ〜」 「あ!たしかにロマンチックかもな!」 「"かも"ってなんだよ!ww………でも本当に、きょう久々にA太くんに会えてよかったわー!向日葵も久々にみれたし!」 「お前のせいでもう金色にしかみえなくなったわ、向日葵」 「あっ……ということはA太くんもいま僕とみる向日葵が特別だと思うってことですか〜?!なんかにやけるなぁ〜〜」 「…っおいまてそういうんじゃ…!!」 「おっ照れてる照れてるwww」 する、と俺の腕からアイツがぬけると、たったっと砂浜の上を走り出した。まじで走り方まで変わってない。そのままくるりとふりかえり、でかい声で「A太くーん!!だいすきだー!!!」とか叫んでいる。ああいう健気で無邪気なアイツをみてると、まだ生きてるんじゃないかと心のどこかで思ってしまう。それがなんだか寂しいけれど、どこか愛おしくもある。 「A太くんさ、」 「なあに」 「大きくなったな、背」 「まじ?そうか…?」 「まじで。成長期?あってか何歳になった?僕12才でとまってるけど」 そうか。あの頃と変わらないのは歳が変わってなかったからか。 「今年で14になった。でもお前と2歳しかかわらないよ」 「2才?!!2才しかかわらないのにそんなに背が高いのか!」 「ゆーて164だから、そこまでたかくないよ」 「ひぁ〜すげえ!!来年もA太くんに会うのたのしみだなー!どんくらいおおきくなってるんだろー!」 「_来年」 「?」 「来年も、会いにきてくれるの?」 「当たり前だ!!! ……てか、会いに来なかったら遠距離恋愛の意味無くなるだろw」 「そっか……………そっか、」 また、あえるんだ。………うわ…もう、また。 「?!どうした、ええ…もう泣くなよA太くん〜!泣き虫かよきみ!!!………っ大丈夫だから!約束!!えーっと、ほら、小指だせ!!」 そう言ってアイツは、半透明の小指を俺の前に突き出してきた。壊れた蛇口から水が勢いよくでてくるような、ぼろぼろ溢れてはながれる涙を左手でぬぐいながら、俺はそっと右手の小指を宙に絡めた。 「泣きやんでよ。ね?来年もその次も、ぜったい、ぜったいA太くんに会いにいくから」 「……っうん、わかった。待ってる。」 「かならず待ってて、約束したからね…!!」 「ありがとう」 「ふふ。じゃあそろそろ家族のところにも訪ねにいってくるよ!__また会おうね、だいすきなA太くん」 さあ、と風がふいた。 アイツは満足げにはにかみながら、透明に溶けていった。 俺は暫く砂浜の上に立っていた。 後ろには眩しいくらいに輝く一面の金色と、空の濃い青に浮かぶ入道雲が、悠々とそこに在って。 すぅ、と空気をすうと澄んだ夏のにおいがした。 麦わら帽子を拾う。 _まだ心臓がどきどきしている。  来年も生きていようと、強くつよく思う。 「なーんかA太、あんた変わったな」 そういってきたのは、ノックなしに俺の部屋に入ってきた母。 「そうか?………てかノックくらいしてよお母さん」 すでに私服に着替え終えている俺は、自分の部屋のカーテンを開け、きらきらした夏の朝日を室内にとりこみながら布団をたたんでいる。 あの日から、ちょうど1年経った。あの、輝く金色を再び目の当たりにした日から。 「目のクマとかなくなってるし、部屋もからっとしてるしさあ!なんかその上"俺、生きてますよー!"って胸をはって主張できますみたいな顔面になっちゃってーー!ははは!いいねぇ!」 ぐーっと伸びをして、それから白い歯を見せて豪快に笑いながら母は言った。たしかにあれから朝泣くことも、朝ごはんが喉を通らなくなることもだんだんなくなっていったような気が。 「"生きてますって主張してる顔面"ってなにそれ!ま、なんかわかんないけどありがと」 「…やーでもまじで、おまえさんが元気になってくれてよかったよ。わたしはうれしい」 「!……本当にありがとう、お母さん」 いつの間にか、毎日が本当にあかるくて、すごく綺麗だと感じるようになっていた。 「じゃあ朝飯にするか!今日のお味噌汁はまじでうまくいったから、ぜひぜひA太にのんでほしい!!」 「…今日もロールパンとお味噌汁なの?」 「いや。食パンとお味噌汁だ!!」 「あーーー、うん。はい。了解!!!」 毎度のことだが、母の料理のセンスは変わっていない。 サンダルを履き、麦わら帽子をかぶる。 「お母さーん!行ってきますー!!」 「おう!A太、気をつけて行ってこーい!」  俺はドアを勢いよく開けて、予め鍵をあけておいたチャリを駆けながらはしらせ、それに飛び乗った。夏のあっついくうきをまといながら、わざとそれに逆らうように立ちこぎで平坦な道をこぐ。もちろん行き先は、あの向日葵畑だ。しゃーー、と車輪の音を勢いよくたてて坂を下った。麦わら帽子を飛ばされないように片手でおさえる。海の青と空のあおがまぶしくてまぶしくて、世界ってきれいだなあとかそんな平和でロマンチックっぽいことを考えながら、サドルに腰をおろす。 だいすきなアイツに会いに行くんだ。一面に広がる向日葵と、背景の空の深い青。それに悠々と浮かぶ入道雲。またあのころと変わらない夏が、ここにはある。 階段をゆっくりおりる。向日葵と向日葵の間を縫うように進む。心臓がどくどくと波打つ。 海がみえた。向日葵畑をぬける。砂浜を踏むと、しゃりと音がした。波打ち際にいるアイツが振り向く。1年後、また会えたときに言おうとずっとずっと思ってたことばを言うため、俺はすぅっと夏のくうきをすう。金色の向日葵を背景にして、俺は目を、__あわせる。           「おかえり」        「ただいま、A太くん!」 end
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!