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ある日、子どもたちと遊んでいた頼家公の目の前に、北条の刺客が現れたという。
「罪のない童(わらべ)を手にかけることが武士(もののふ)のすることか!」
頼家公は、そうおっしゃって、刺客達を一喝され、子ども達を逃がされたそうだ。子ども達は、その場から必死で立ち去ったが、母上は、たとえ子犬一匹だけになったとしても、親からの代の頼家公への御恩を果たそうとその場に残って頼家公と共に戦ったらしい。
頼家公は、刺客の武器を奪い、母上も必死に吠えて刺客に噛みつくなどして応戦したが。多勢に無勢で、頼家公はとうとう力尽きてしまわれたらしい。
「雪よ、お前は、白梅と紅梅の子であろう。最後までよう忠義を尽くしてくれた。お前は生きろ。」
それが、頼家公の最期のお言葉であったという。獣(けだもの)ながら、母上は、頼家公と運命を共にしようと思っていたのだが、頼家公の最期のご命令とあればと、泣く泣く恥を忍んで雌一匹生きながらえることにしたという。
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