上げろ! 反撃の狼煙!!

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上げろ! 反撃の狼煙!!

「戦争を肯定する意見はなかなか難しいし、肯定したくありません。何か良い案はありませんか?」  夏になると終戦の頃の話や戦争にまつわるドラマ等も放送されます。それは8月15日が終戦を迎えた日だからでしょう。  歴史は小学6年生からの科目なので詳しくは知りませんが、メディアの情報で分かります。戦争は兎に角良くないと。  そうなると論点は戦争ではなく、それを起こす人間の方に目を向けた方がこちらに有利な論理展開になりそうです。人間はそれほど悪くないという論理展開です。 「俺に良い案がある」  パンクな布袋尊さんが手を上げています。「俺」という一人称が良く似合ってます。これだけでクラスの洟垂れ男子どもと一線を画しています。 「お!? 寅泰が積極的にかかわるとか珍しいな!」  それはいけません! 毘沙門天さん! それはあなたに「今日も負け越しゼンパイマン」と言っているようなものです。 「あ!? もう一度いってみろ! 全敗マンが!! おっと、役に立たないから全廃だったかな?」  だから言ったではないですか!(声には出してはいませんが……)  それにしても全廃と全敗を瞬時に掛け合わせるとは見事なライムです。  寿老人さんと福禄寿さんはゆっくりお茶を飲みつつ寛いでいます。このような事は日常茶飯事なのでしょうか? ひょっとしてリーダーである私に期待を……  するとどこからかキレイな音色が流れてきます。気分が落ち着きます。空気が和らいでくるのが分かります。  音楽っていいなぁ……とポワポワします。それはあの二人も同じようです。 「すまんかった布袋」 「ん……ああ俺も悪かったよ」 「それで何か意見があるんですか?」 「ああ。そうだったな」  なんとか二人が落ち着きます。 弁財天さんがにっこりしています。その手にはギターのような楽器が。琵琶というらしいです。  どうやら弁財天さんの楽器の音色によって気分が落ち着いたようです。  布袋尊さんの主張は人間という存在が悪いものというのではなく、戦争を起こさせる気持ち等の要因がよくないとの主張です。  この論理で行くと戦争は確かに悪い。しかしながら、人間を惑わす何かしらの要因が悪いということにできます。 「それに人間は『神』が想像したという前提が彼女らにはある。これは論理の世界だが、『神』が作ったものが不完全なものということにはできないしな。それに故に外的な何かが悪い。それを排除せよって言えるわけよ」  布袋尊さんの主張は筋が通っています。これは勝てる気がしてきます。問題は外的要因を何にするか? しかし、これには心当たりがあります。  しかもこのパンクな容姿からのこの主張です。小学校というところは没個性、没主張が好まれます。一部の社会的模範と思われている職業についてもそうですが、見た目とのギャップに目を引かれてしまいます。  ん? 待てよ、この感覚。しかし、そう思うのは「社会の常識」という鎖に縛られているだけではないでしょうか? ふと私は見た目で判断するという偏見を持っていたことに気づき、布袋尊さんをそのような人(神)というふうに見ていたことを恥じます。  ミカエルさん達が主張する人類の犯した罪は戦争、自然破壊、そして人種差別です。  人種差別こそ、今私が経験した「見た目」からの判断によって、勝手なイメージを集団に植え付け、それを「社会の常識」にしたものなのではないでしょうか?   ミカエルさんの言う人類の七つの大罪(内容は忘れましたが……)とは嫉妬等の人間の感情です。そういう意味では人間に備えられたもの。  戦争と自然破壊は行為なので外的要因という主張が通りそうですが、人種差別は人間の感情がむき出しになっています。この反論には一工夫が必要なようです。  人類の弁護に関する方向性が見えた頃、大黒天さんと恵比寿天さんが戻ってきました。  大黒天さんは地元出身の強みを活かしてインド神を味方にすることに成功したようです。 「もういいでしょう。そろそろ反撃の狼煙を上げる時です」  自分で言っててかっこいい台詞です。「反撃の狼煙」という辺りが中二病心をくすぐります。(私はまだ小学5年生ですが) 「円陣を組みます! 円になって!!」  ここはもう勢いで行くしかありません。七福神たちは私の号令に応えるように円陣を組んでくれます。  「一人はみんなのために! みんなは一人のために! one for all! オールインワン!? ワンチーーーーム!!!……」  あまりの気合いにみんながついて来ていません。  リーダーとは孤独なのです。そんな事を聞いたことがあります。リーダーは組織の奴隷なんてのも聞いたことがあります。(元ネタ知りません)  ……ていうか、掛け声かける時に浮くのメチャクチャ恥ずいんだけど!! 「コウメちゃん、ちょっといいかしら? 掛け声の練習からはいりましょう? チーム七福神では三本締しかやったことがないので……」 「ですよね! すみません! 近所の子供がよくうちの神社の境内でやっているもので……」  訊かれてもいない言い訳をします。恥ずいの上塗りです。  コウメちゃんが笑いを堪えているのが分かります。(ドングリにバイブ機能はありませんので)  この後、説明、練習、予行を実施して無事に円陣での声出しを実施することができました。(オールインワンではなく、all for oneという指摘をしてくれたのは毘沙門天さんでした。「戦いの神」の面目躍如です)  いよいよ反撃の狼煙が上がるのです。人類は簡単に滅亡なんかしません!
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