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生気がなくなっていく目とともに、ウルの花は枯れていく。僕はウルから受け取った薬の入った小瓶を大事に握りしめて、ただそこに立ち尽くしていた。
広がっていくウルの血を目で追っていくと、扉からレイが入ってきた。
「ウル――」
まるでさっきまでの出来事を見ていたかのように、レイはウルの姿を正面から受け止めていた。そんなレイの涙はウルの頬を伝うが、ウルはもう動かない。
「ウルはきっと副作用なんて知らなかったと思うの。だからみんなには何も言わないでほしい」
レイはただ悲しみに暮れていて、だけどちゃんとウルを見ていたその心は誰よりも美しく見えた。
ウルの机には薬について書かれた書類がいくつもあって、その中には書かれただけの手紙が混じっていた。そこには「コア様へ」と綴られているが、この手紙は届けられなかったのだろう。僕はそっと手紙を手に取り、この手紙をコアという人へ届けようと誓った。
「その薬は、ウルが言った通り君が持っていて」
レイは寂しそうにそう言って、ウルの顔に手を添え泣いていた。
「うん――」
僕はこれ以上かける言葉も見つからず、レイに花が咲いたことも黙って見ているしかなかった。
レイは所々話を変えながら、ウルの花が枯れていったことをみんなに説明した。当然みんなは直ぐに受け入れはしなかったが、レイの涙を見て何も言えなくなっていた。今回の街の一件については薬の副作用であったことを説明した。ウルの薬の書類に「何度も使えば突然土化してしまう」という副作用の内容が記されていたことから、僕の身は今のところ心配ないことも分かった。
みんなが静かな空間に悲しみを流していく中、僕はウルが静かに残した最期の言葉を思い出していた。
「最後に一つだけ願うことが許されるのなら、ボクは彼の特別になりたい」
僕はこの言葉にウルの英雄に対する気持ちが全て詰まっているように感じて、ウルから受け取ったこの薬を必ずその人に届けようと決めた。そして叶うのなら、ウルが最期まで想っていたことを伝えたい。それで何かが変わるわけではないけど、それがいつかウルのもとまで届くように――。
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