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2 チャペル
『リンゴーン』
白い教会のチャペルで行われた結婚式は公爵家と伯爵家の親族だけで行なわれた。
婚約後たった1ヶ月の期間しかなかったのだ。他の招待客等呼べる訳が無い。
公爵家の新しい当主の浮名は相当で、貴族達だけで無く市井でも有名なのだから、マリアがお飾りの妻になるのは誰だって分かりきった事だから。
そんな哀れな女性を見に来る程皆暇では無いのだろう。
清楚な白いウェディングドレス。
肩から腰へと緩やかにウェーブを描きながら流れる艷やかな金の髪は、長く白いベール越しに透けて見えている。
不透明なベールでかくれていて顔は見えないが、今日初めて会った花嫁の所作の美しさやほっそりとした華奢な身体つきを公爵閣下はお気に召した様で、挙式の間満足そうに頷いていた。
誓いの言葉は神父の問いかけに
『イエス』
と答えるだけなので何も難しくないし、誓いのキスは貴族だから互いの手の甲に唇を落すだけである。
婚姻誓約書に新郎新婦の2人がサインをして神父が其れを参列者に掲げて見せるパフォーマンスを確認すれば、彼らは世間に認められた新婚夫婦。
その新婚生活の内容がどういうモノになるかは、まさに神のみぞ知る出来事である。
正当な後継ぎであるマリアをまんまと追い出した中継ぎでしか無い筈だった伯爵は、後妻と義娘と共に金もたんまり公爵家から頂き今後の生活も安泰だとニンマリ笑った。
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