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7 恋に落ちる時間
「ああでも、伯爵家から暇をもらったメイドなら公爵家の庭師と結婚して隣国に向かったらしいけど?」
「あら、そうだったの」
「公爵夫人が前日まで生きていたのは確実だったみたいでね。メイドの証言もあったし。ただメイドの運んだ食事は食べずに、ずっと捨ててたらしいよ。ベッドの下から生ゴミが見つかったらしいからね。侍医が解剖したら胃の中も空っぽだったってさ」
そう言う俺の顔を覗き込みながら、自分の髪の毛を指先でいじる友人。
「そうなのね。伯爵家で長い事メイドとして働いていたから、公爵家で働いて庭仕事でも手伝ってたのかしらね?」
彼女は首を傾げて目をパチパチとさせる。
「さあね。でも人が恋に落ちるのは時間じゃないからね。2ヶ月もあればプロポーズされたって不思議じゃないさ。庭師は元々隣国の出身らしいよ」
「ふう~ん」
彼女が俺の顔をマジマジと見ながら
「ねえ、公爵家のお抱えデザイナーが作ったウェディングドレスの着心地どうだった?」
「・・・ 何のことかな?」
シガーに火をつけると眉を顰める彼女。
「寝煙草は危ないのよ」
「はいはい」
灰皿に火を着けたばかりのシガーを押し付けた。
勿体ないから後で吸うか。
「ねえ、どこから仕入れたの? 身代わり」
「職業上の秘密です」
「秘密ばっかりね」
「謎の多い男が好きなんでしょ? 自分で最初に言ってただろ」
俺がそう言うと、彼女はふくれっ面になった。
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