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不思議と嫌悪感はなかった。母親が変に気を利かせてきたと憤る気持ちよりも好奇心の方がはるかに勝っていた。
A4の紙に書かれたリンク先からログイン画面を開く。ライトブルーの背景に「バーチャルスクール icoi」という文字が効果音とともに浮かび上がった。僕はIDとパスワードを設定し、Enterキーに手をかけた。胸の鼓動が早くなり、指先が少し震える。今から未知の世界へと飛び込む。
「ようこそ、バーチャルスクールicoiへ!」
雪だるまのような形をしたロボットのマスコットキャラクターに誘われながら、僕は最初にアバターの見た目を選んだ。髪の毛や目、肌の色、ファッションも自由に変えることができた。しかも、人間だけではなく、動物やモンスターのような個性的なスキンもあった。市販のテレビゲームに引けを取らない仕様にちょっと感動する。
僕は30分くらい迷った挙句、戦国武将の織田信長をイメージしたアバターを作り上げた。特に深い意味はなかったが、発見した丁髷のヘアスタイルが少し面白かったことと、勉強の中では歴史がダントツで好きだったことが理由だ。スクールでの名前は普通に「ミノル」で登録した。
icoiでは、興味のある授業を自由に選択して受けることができる。各々の時間で、開かれた講座の中から、自分で授業を選んで受講するスタイルだ。例えば、1時間目に国語、2時間目は授業を入れないで、3、4時間目に連続して理科の授業を取るということも可能だ。受けたくない時間は授業に参加しなくてもいい。まるで大学みたいだ。
僕は試しに何個か授業を受講してみた。詩の感想を書いてお互いにチャットでコメントしあう国語の授業や、数学でサンドボックス型のものづくりゲームを使って、異なる図形の体積を比較するという進歩的な授業もあった。一般的な中学校のように、ちゃんと9教科全てが揃っていて、音楽や技術家庭科など実技系の授業まであった。体育なんてオンライン上でどうやってやるんだろう、と疑問に思っていたが、実際受けてみると、体育の先生がビデオ通話で器械体操のお手本を示し、「家でできる人はやってみよう!」と呼びかけながら明るく授業をしていた。
毎日ログインを続けているうちに、僕はしだいに、icoiが好きになっていった。
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