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はじまり
「いや、なんで??」
意味が分からない、というように眉を顰める。
「だってお金が無いんだもん」
そう言う父は元ヒモ。
つまりはそういうことだ。
ヒモであった父が関わりを持った数多くの女性の中の1人との子供が私、優空美月。
父曰く、関わりを持った女性が多すぎて私の母親の名前や顔すら覚えてないという。我が父ながら本当にクズだと思う。
まぁ、父がクズということはそこまでにしておこう。
先程も言った通りこの人は元ヒモ。女性を弄んでお金を貰う生活をしてきたのだ。
そんな訳でまともに働ける訳でもないし、唯一の取り柄は顔くらい。
元ヒモなんていう、経歴もあるためその顔を活かせるモデルなどにはなれないだろうし、万が一人気になったとしても元ヒモということがバレたら炎上して終わりだ。
ヒモに戻るのは子供である私がいるため出来ない。私を捨てない所は褒めてやろう、クズだが。
まぁ、そんなこんなでお金が無い。
だからといって
「怪しい宗教かなんか知らないけどそんなとこに娘を入らせる馬鹿が何処にいる??」
「ここー」
「うざ」
この父親、急に来た怪しい男に
「貴方の娘さんは選ばれし者です。ぜひ入ってもらいたい!勿論お金は掛かりませんし、逆に報酬が入りますよ…?それはもう、たんまりと」
と言われ即答で
「入れます、娘をお願いします」
と言ったのだ。
その後、そそくさと男が帰り今に至る。
「あのねぇ、そんな入るだけでお金貰えるほど人生甘くないよ?」
「時には賭けも大事なんだよ、お前より人生の先輩だっつーの」
「競馬で勝ったことないじゃん」
「お前本当にかわいくねぇな。何歳だよ」
「13歳。中学2年生です。」
私が可愛くないのは9割貴方のせいです、これは本当に。
「まぁ、決まったことだし。来週旅立つんだな、我が娘」
「は?」
いくらなんでも早すぎる。
「いやぁ、たまには連絡しろよー、パパ寂しくて死んじゃう」
「内心、これから舞い降りてくるお金にわくわくしてるくせに…よく言うよ…」
「バレた?荷造りぐらいは手伝ってやるよ」
「手伝うっていうか、全部してよ。誰のせいだと思ってる??」
「俺だわ」
学校にはしばらく休むとだけ伝えたらしい。
義務教育だし、やめたら父は罰金or懲役らしい。でもこの人クズだから1回くらい痛い目みた方がいいと思う。
そんなこんなで1週間が過ぎた。
今日は私の運命の日。
「じゃあ、元気でなー」
「ゔん」
「泣くなよー」
「だっでぇ、パパア゙ア゙ア゙」
「はいはい、またなー」
「ゔぅ」
会えなくなる訳では無い。多分。
でも私も中学生な訳でいざ、親と離れるとなるとやっぱり寂しい。
どんなにクズでも私にとっての親はこの人だけなのだ。
「迎えの車来たぞー」
そう父に言われ、顔を叩く。
いつまでもグズグズ泣かない。だって会えるでしょ、多分。
「お迎えに上がりました、どうぞ車に」
意を決したところで車が止まる。
「じゃあ、頑張れよ!」
「貴方のお金のために頑張りますよ」
「頼んだ!」
その父の言葉を背に私は車に乗った。正直、運転手さんも怪しく見えるくらい警戒心MAXなのだが。
「では、失礼致します」
これまた怪しい黒いパーカにフードを被った男がそういうと、車に乗り動き始める。
手を振る父を見てまた泣きそうになったとき
「とりあえず貴方には神様になってもらいます」
怪しい男はそう告げた。
涙吹っ飛んだよね。
もうその時には我が家のクズのことなんて頭になくて
「は?」
思わずガチトーンで聞き返したよね。
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