パンドラの記憶【パンドラの記憶】

1/1
前へ
/55ページ
次へ

パンドラの記憶【パンドラの記憶】

 深海の羽衣の物語は、これで終わりだ。わたしは、ソファで眠る娘のそばに座った。 「ねえ、ばあちゃん。わたしの羽衣は、ばあちゃんだったよ。ばあちゃんがいたから、生きてこられた。そして、この子が今の羽衣よ。」  娘の前髪をそっと整え、ちょっとだらしない寝顔のほっぺたを、そっとなでた。 「今日が命日だから、無理をして、書き上げたのね。本当に、しょうがない子なんだから。」  わたしは、カーテンの隙間から見える、秋の空に祖母の笑顔を重ねた。  ばあちゃん……。わたしの笑顔も、ばあちゃんみたいかな。  ねえ、ばあちゃん……。  ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加