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「…あの、ここって」
「ここは市民病院です。昨日電車事故があって、緊急搬送されたんです。ここにいる皆さんは、その事故の…」
病院?
電車事故があったって、…どういう…
「電車事故って…」
「今は、とにかく安静にしておいてください。橘さんのご家族も病院にこられてます。今呼びに行っておりますので」
…橘さんって誰…?
ご家族って言うけど、母さんならそこに…
母さんって呼ぼうとした。
向かい側のベットに向かって、何か言ってる。
後ろに立ってる人が、宥めるように母さんの背中をさすってた。
…おじさん?
でも、どうしてここに…
バタバタと響く床の音。
「祐輔!」
目の前までやってきた背の高い男の人が、私に向かって声をかける。
祐…輔…?
マスク姿で、誰かはわからない。
わからないけど、私の知り合いじゃないことは確かだった。
だって、見覚えないし
「大丈夫か!?痛いところとかは?」
痛みは、ある。
頭がとくに痛い。
関節はまあまあ…かな
それはいいんだけど、どちら様…でしょうか…?
「心配したぞ…、本当に…。一時はどうなるかと…」
「…えっと、誰…ですか?」
「記憶がないのか…?父さんだ。ほら」
マスクを外して、顔を見せてくる。
…あれ、どこかで…
でも、父さんじゃないことは確かだった。
急にガタイは大きくなんないでしょ?
そもそも、顔が全然違う。
人違いだと思うんですが…
「あの、母親が…、そこに…」
「え?母さんが…?」
男の人は驚いたように振り返る。
だけど、一通り見渡したあと、私を見た。
「祐輔…。とにかく今は安静にしておくんだ。わかったな?」
「…いや、その、呼んでもらえませんか?」
母さんを指さす。
あの人ですって、訴えかけた。
すると隣にいた看護婦さんが、母さんを呼びに行ってくれた。
こっちを向いて、近づいてくる。
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