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2人は顔を合わせる。
一瞬固まったように間を置いて、尋ねてきた。
「…その、母さんって言うのは?」
「は?…えっと、母さん…?」
母さんを見る。
呼んだら、変な顔をするのはなんで?
それに私のことを見て、「祐輔」って言うのは…?
変な違和感が、体にあった。
なんでこんなに、ゴツゴツしてるの?
その感覚は指先にあった。
こんなに腕が太かったっけ…?
っていうか、なんで男物の服を…?
手のひらを広げてみる。
ぶかぶかのズボン。
身につけた覚えのないミサンガ。
「…え…、嘘でしょ…!?」
「どうした!?」
…髪が、…無い!?
…え、なんで!!?
すごくゴワゴワしてるというか…、なんでこんなにツンツンしてんの…??!
前髪も後ろ髪もなかった。
“無い”というか、なんでこんなに短く…!?
「…あの、すいません。鏡はありますか??」
母さんが化粧鏡を貸してくれて、急いでそれをひらいた。
事故に遭って、何が起こったのか知らないけど、まさか髪が無くなったとか…!?
こんなに頭痛がするのも、すごい怪我を負ったから??
一抹の不安が頭によぎる。
どんな怪我を負ってるのか、すごく怖くなった。
だって、髪が無いなんてことある…??
普通はそんなことにならないでしょ?
すごい大けがをしない限りは…
……………
……………………
……………………………え?
そこにある光景を、私はすぐに理解することができなかった。
顔に傷があるとか、髪が無くなってるとか。
そんな異常事態よりも、ずっとずっと、あり得ないようなこと。
一瞬、夢を見ているのかと思った。
それくらい、目を疑った。
今、何が起こってるのか。
何が起きたのか。
そんなことが、全部真っ白になる。
何も考えられなくなって、時間が止まる。
わけがわからなくなったんだ。
割れそうになるくらいの痛みのそばで、鏡の向こうに映っている「自分」。
その「顔」が、見た目が、自分じゃなくなってるなんて、思いもしなかった。
…“アイツ”になってたんだ。
祐輔に。
幼なじみの…
…………顔に…
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