創作意欲

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 地元から一〇駅以上離れたショッピングモールで服と靴を買いに行った帰りに、駅の中のデパ地下のパン屋に寄ることにした。何ということはない。ただの気まぐれである。 デパ地下のパン屋コーナーには二つの全く異なる店が隣り合わせで並んでいた。 陳列棚の中。並べられた大小さまざまなバゲットを見ていると、とくん、と心の中で雫が落ちたかのように広がる思いがあった。 ――ああ、料理がしたい。 毎年更新される異常な暑さによって料理をする気力もなくし、最近は簡単なそうめんかスーパーの惣菜ですませてきた。でも、いま無性に料理がしたい。 私はせき立てられるように一つのパン屋の中に入り、トングとトレーをとると、バゲットやクロワッサンをトレーの上に並べていく。レジに並び、会計を済ませたら、今度は隣のパン屋に足を運ぶ。そして同じようにバゲットとクロワッサンを購入すると、エコバッグの中に詰め込まれたパンの重さを確かめながら、早く自分の住む町の駅に戻ってスーパーに寄らなくては、と重い駅の改札へ急いだ。 クロワッサンは明日の朝食にしよう。ベーコンエッグを焼いて、レタスとタマネギをコンソメで味付けしたスープを添えて、野菜サラダも作ろう。 それから、今夜はバゲッドに合う食事にしよう。暑いけれど、何だか無性にビーフシチューが作りたい。ガーリックトーストにするのも悪くないし、硬くなったらバターたっぷりのフレンチトーストにするのもいい。 私は強い創作意欲に思考を回転させつつ、心を弾ませながら改札を通った。
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