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#92『ごめんなさい』
「……は?」
シェイネの複雑な感情がその一言に込められていた。困惑、不信、喪失感、自責。全てがそこに詰まっていた。
目の前で今にも倒れそうになっているキングやシューターもじっとシェイネを見つめていた。
「ごめん…。君には内緒だって…強く念押しされてて。」
「…私達のせいで…ああなったから…。」
その傍で防護服を見に纏い、土埃を被ったまま立ち尽くしているアルテミシアでさえ何も言わなかった。起きてしまったことを悔いるだけの猶予がその場には残されていなかった。アルテミシアはじっとシェイネを見つめていた。
「大元の依頼主は私。そっちの警察官二人を恨むくらいなら私を恨め。」
「いや…引き受けた私に非がある。申し訳ない…。」
マッティアも口を挟む。キラーも気を失ってしまったエファセを抱えながら「もう君は一人になったほうがいい」と呟いた。
「そうだよ。君は、休もう?」
カラニがそう説得する。シェイネは、カラニの腕に抱えられたレジーナをじっと見ていた。
シェイネの一言、一挙一動をこの場の者全員が見守っていた。
「…ふぅ。」
小さく息を吐いたかと思えば、シェイネは伸びた髪を束ね始めた。
「…アルテミシアさん。この二人を病院へ。名所とも言われるビーチからここまで来るだけの体力が残されているのなら、市営病院でもなんとか処置は出来るでしょう。キラー、先輩は寝かせておいて。私に少し心当たりがあるから。寝れば意識は回復すると思う。マノ、バイオテロな以上感染力は侮れない。今からでも感染しないようにマスクをしてほしい。レヴィさんを一緒に大学病院に連れて行こう。救急車が逼迫してるのは容易に予想できるから、歩きで行くしかない。いける?」
その言葉の羅列に一同は困惑した。嘆きも悲しみもしない。それどころか周りに指示を出し始めたのだから。
呆然と立ち尽くしている一同をよそにシェイネはカラニに近寄る。
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