#114『血と知の恵』

3/10
前へ
/230ページ
次へ
「どうして思いつかなかったのかしら──。」 ポツリと呟かれたその言葉に、クリスティーナとレアルターレは不思議そうな顔でサングを見つめる。あまりにも脈絡のない呟きだった為にそのような表情を浮かべるのも仕方がないことであった。 しかしそんな二人の様子に気付くでもなくサングはつま先でトントンと床を叩いて音を立てながら、俯いて口元に手を寄せて考え込むような姿を見せていた。 「何か──分かるかもしれない。血について。能力そのものの実態は分からずとも…どのようなものがあるかは分かるかもしれない…!」 一方その頃、北部校舎の広大な草原ではディクソンが青空を仰ぎながら横になっていた。その表情はどこか気落ちしているようにも見える。息を大きく吸って──そして吐いた。一人の少女にはこの草原はあまりにも広い。己がちっぽけな存在だとディクソンは目を瞑る。 あの日、テレビでスルガの病院でのニュースを見ていたら告げられた。アードラーの表情といい声色が酷く落ち込んでいたと彼女は記憶していた。 「…ミル以外が捕まってる…おまけにミルはそこに単身乗り込んでいる…ねぇ。ミルのことだから、余計な心配はかけまいと言わなかったんだろうけど…なんか悲しい、かも。」 また大きなため息をつく。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加