1人が本棚に入れています
本棚に追加
「クソデカため息つきやがって。俺には散々明るく絡んできたくせになんなんだよ。」
どこからか声が聞こえて、ディクソンは咄嗟に上体を起こして周りを見回す。するとそこにはぼうっと立ち尽くしているアードラーがいた。
「何やってる…って言われてもね。なんとなく、みたいな感じ?」
「…嘘つけ。」
「嘘っていうか、そうとしか言えないんだよね。悲しいとか寂しいとかそうなんとなく思ってるだけ。ルドルフが悪いわけじゃないよ。本当に。悪いわけじゃない。むしろ教えてくれてよかった。」
「それでなんだよ。なんでずっと凹んでんだよ。」
「無力感──みたいな感じなのかな。」
「らしくないな。」
「本当だよね。」
困ったような笑みをディクソンが浮かべる。どこか諦めや無力感を感じさせるその笑みに、ディクソンの先ほどの言葉が本心であると物語っていた。
「ムカつく。」
アードラーが拳をぎゅっと握りしめて顔をしかめる。ディクソンはそれを認識して力なく笑って、俯いた。
「ごめん。」
「誰に何を謝ってんだよ。」
「……なんだろう。」
ぽりぽりとディクソンが顔を指先で掻く。何も言えないようだった。妙な沈黙がしばらく続いた後にアードラーがポツリとつぶやいた。
「馬にでも乗ったらスッキリすんじゃねーの。」
ぶっきらぼうで不器用であったが、彼の優しさはディクソンに伝わっていた。空元気と言われても仕方ないくらい突然ディクソンが立ち上がり、「乗ろっか!」と声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!