#114『血と知の恵』

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馬に騎乗するために馬具やら何やらを準備しながらディクソンはアードラーに対してこう語る。 「カルタージャックとルアルジネイロ。この二頭ね、昔は仲があまり良くなかったんだよね。ジャックが人懐っこくて社交的だったんだけど、ルアルはそうじゃなくて。一人の方が好きな子だったんだよね。あ、いや今もあまりいっぱいで群れるよりも一人でいることの方が好きっぽいけどね。」 「ふーん。」 「なんか私達っぽいかも?みたいな。」 「……俺はアンタと仲良くなった記憶ないけどな。」 「酷いなぁ。私はそれなりに仲良くできてると思ってるんだけど。」 「解釈違いだな。すれ違いだよ。」 「ふふっ、そっかぁ。」 先程よりか幾分柔和な雰囲気をまとっているディクソンは、プロテクターとヘルメットとグラスを身につけて馬房へと赴く。 「どっち乗りたい?」 「ルアル。」 アードラーがボソッと小さな声で呟きながら栗毛の馬を指差した。 付けられた頭絡に手綱を繋ぐ。鞍を装着する。手綱を軽く引いてやると栗毛の馬はじっとアードラーを見つめる。そして吟味を終えた馬はぶるると息を吐いて首をぶるぶる振って、後肢を屈曲させて乗るように促した。アードラーが跨ると、ぐわっと勢いよく屈曲させていた後肢を延ばして立ち上がった。アードラーはその前後動に揺さぶられながらもなんとか姿勢を正す。後ろではディクソンが青鹿毛の馬に跨っているところであった。 「前よりいい感じじゃん。」 「…おう。」
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