#114『血と知の恵』

8/10
前へ
/230ページ
次へ
「どういうことなの?」 「…シェイネ──覚えてます?金髪のあの子。」 「えぇ、それは─まぁ─?」 「あの子の実家とも言えるでしょう。本当はこんなこと話す予定なんてなかったんですけど。話さないわけにもいかないでしょう?」 サングがゆっくりドアノブをひねって扉を開ける。埃こそかぶっているが、綺麗に片付けられた子供部屋であり、過去の形式がサングの頭の中で蘇る。 『私に何かあったら、ココをお願いしてもいい?テネにも伝えてあるの。でも、テネって変なところで臆病だったり引っ込んじゃったりするでしょ?だから、サングにも話しておこうと思って。』 「友人も私も──……。」 ここで言葉に詰まった。アーテルの名前を口にするか──否か。 半開きになっていた口を一度ギュッと閉じて、息を吸い込む。 「──あの子たちの教師にあたる、アーテルさん…私達はテネと呼んでいました。私達三人は、トリヘックスに過去介入していました。とはいえ、悪事を働くためではなく、スパイとして。実際に組織内に潜入していたのは私以外の二人でしたが。」 そう言いながらサングの手が飾られたネックレスに伸びる。並べられた二つのネックレスのチャームは月と太陽の惑星記号の形をしていた。そのネックレスを手に取ると、ネックレスの重量によって制御されていた何かしらのトリガーが発動したのか、ガガガとベッドの方向から音が聞こえてくる。クリスティーナ達が咄嗟にベッドを退かすとそこには地下へと通じる階段があった。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加