#114『血と知の恵』

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『サングの子はサンヴラド。スペルは違うけど英語で太陽みたい。それでルナは月。なんか、運命みたい。私達みたいな。』 『じゃぁ地球はなんなの?』 『テネに子供できたらアースって名前になったりしないかな?……ないか。』 『ないわね。』 「潜入捜査の最中、友人は殉職したのです。同じタイミングで友人の旦那…つまりルナの父親も亡くなっています。ホックやジルの両親も亡くなっています。」 地下の部屋に飾られた写真を指差す。二人は何も言わずに写真をじっと見つめていた。 「テネは生きた。サバイバーズギルドってご存知?テネはそれに苛まれながらも、残されたジル、ホック、ルナ…そしてジルとホックの妹であるイルゼとイザボーを守ろうと、育て上げようとした。そこで誤算があった。」 「誤算…?」 「ルナは聡い子でした。今もその聡い一面はありますが。…単身逃げてきたんです。我が家に。」 サングがそう言って写真を収めている額縁を外す。 「…ルナが逃げてきて色々話を聞いて、テネ本人からも話を聞きました。あの人は何も悪くない。それでも、友人を失ったショックは大きい。考えなしというか、その時の衝動というか…ごちゃごちゃの頭でテネに酷いことを吐き捨ててその勢いのまま、ルナだけを引き取って我が子のように育てた。」 額の裏にはソフトボールほどの大きさの何かが収められていた。それを手に取り、懐にしまうと額縁を元の場所に戻す。
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