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#115『飛んだ跳んだ未来へ翔んだ』
『私に今できることは、遺されたものをちゃんと活かして……これ以上後悔しないことです。』
その言葉を胸に留め、レアルターレは病院へと足を踏み入れる。受付でのいつもと変わらない会話を終え、夫であるクロードウィグの元へと向かう。いつもと変わらない──夫がここにやって来てから、私がここに通うようになってから何も変わらない。
前に予約されていた時間ぴったりにやって来たレアルターレを見たトッパンは一度ペコリと軽くお辞儀をする。レアルターレも一度礼をする。
「あれから夫はどうでしょうか。」
「大きな変化こそありませんが、何か彼の中で変化があるようです。」
「退院の見通しは立っているのでしょうか。退院とまではいかなくても、そろそろ外出の許可を下さっても良いのではないでしょうか……なんて思ってしまう私がいて。」
「外出、ですか。精神的な病ですし──。」
ガラリと勢いよくスライドドアが開かれた。その音にトッパンの意識がそちらに向く。
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