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「やっぱり切れた時が怖いだけで効果は絶大ね。私だって痛い思いしたんだもの。二度とあんなの経験したくないわね。切に願うわ。」
手持ち無沙汰なのか爪を見ながらバートリーがそう口にする。牢越しにシェイネがそれをじっと見つめる。その風貌は一月前よりも幾分改善されているようだ。服の下の痣もありとあらゆる怪我やら傷の数が減っており、それなりに手当も受けられているようだった。
「君くらいしかいないよ、薬を飲まされていると分かっていながらここに来るのなんて。」
「……情け、的な?」
「情けか、はは、そっか。それでもいい。話し相手がいると思うと気分は楽だよ。」
シェイネがそう笑い声をあげる。バートリーはそれに構うでもなく目を瞑って顔をあげ、息をつく。
「ねぇ、ルナ。怒ってる?」
「……いいや、怒ってないよ。どうして?」
「どうして、ねぇ──貴女に何も話さずに出ていってしまったから。おまけに行方不明になって、それで…貴女の感情のやり場を奪ってしまった。」
「元々、君達にどうしようもない感情を向けようだなんて思ったことはないよ。」
「違う。」
「……そっか。」
「私達は私達の意志でルナを傷つけた。」
「傷ついたなんて思っていないよ。ただショックを受けているだけだよ。それに、私は今の性質を利用して策を講じてここにいる訳だし。いずれ、こうなることは決まっていたと私は思うんだよ。」
「……前のルナに戻らない?」
「今は、無理かな。」
「そう。」
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