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「信じられないかな。」
「別に?信じようが信じまいが貴女の中には存在する概念なんでしょう、ソレは。」
「そうだね。」
「今更気遣うでもなく他人を気にするような人でもないでしょ?」
「さぁ?少なくとも今はそうだけれどね。」
「そうじゃない人格もあるって?」
「…あるね。」
あるのねぇ、と気の抜けた返事をする。そこで一度会話が途切れ、二人とも黙ってしまった。話を切り上げるつもりはなく、むしろ何か言葉を発さねばと互いに考えていたが、何を切り出せば良いのか分からず互いの顔色を窺っていた。
数分間静かな地下牢。今更静かであることに疑問を呈するのもおかしな話だとシェイネは感じた。
「サン。」
「何?」
「みんなをここに連れて来れるかな?」
「…何の為に、って聞くのも野暮?」
「聞いてくれてもいい。君になら話してもいい。」
「何それ。私だけ特別扱いじゃない?」
「お姉ちゃんだろう?身内特権だよ。」
戯けるでもなく落ち着いた口調でそう言われたバートリーの顔から笑みが消え失せる。鳩が豆鉄砲を食ったような顔であった。
「……身内特権なら、今の私じゃない方がいいわ。」
牢の扉を開け、バートリーがシェイネに近付く。色白で妙に冷たい手がシェイネの頬に触れる。
「……連れて来てあげてもいいけど、その前に一個いい?」
「何かな?」
頬に触れていた手が首筋に触れる。妙に覚えのある感触とともに淡い光がそこから漏れる。
「──死なないでね?」
その言葉と共に、牙をのぞかせたバートリーの口がちゅっとシェイネの首筋に吸い付いた──。
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