ザ・マスコット・ウォーズ!

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ザ・マスコット・ウォーズ!

「そうだ、クッキーワールドへ行こう」  まんたが据わった目で言い出した時、僕はこの世の終わりが来たかと思った。  青い丸っこいエイを模した魚のフォルム。ながーい尻尾。普段は物静かで面倒くさがりの彼が行動を起こす時は決まって、本気でブチギレた時に他ならないからだ。  実際、針のような尻尾をべしべしと地面に叩きつけている。叩きすぎて地面が若干抉れている。本人が覚えているかは定かではないが、彼の尻尾は毒針だということを忘れてはいけない。正直言って、怖い。 「いい加減、まんたは堪忍袋の緒が切れた。このまま奴らを野放しにしてはいけない。まんたは今から軽く宣戦布告をしてこようと思う。そしてとりあえず奴等を根絶やしにしてこようと思う」 「待って待って待って待って!?どっちも軽く、とかとりあえず、でやるようなことじゃないよ!?」 「止めないで、ルカ。大丈夫、蟻の子一匹逃さないから。きちんと始末するから」 「そういう問題じゃないいいいいい!」  まずい。これはまずい。  僕は冷や汗だらだらでストップをかけたのだった。ああ、自分が屈強なゴリラとか人間とかだったなら、もう少し強硬策に出ることもできたかもしれないのに。どうして己は器用な手もパワーもないイルカの姿なのだろうか!  周囲にいるのもみんな、海の生き物の姿をした仲間たちばかりである。全員デフォルメの姿ではあるけれど。  そう、ここは人間たちの世界ではない。  ウォーターワールド、と呼ばれるデフォルメされた海の生き物が暮らす世界。ちなみにみんな魚系の姿であるが、水がないと呼吸が出来なくて死ぬということはなかったりする。それはそれ、僕たちを作った神様のご都合主義というやつだろう。  僕たちは、自分がいわゆる“マスコットキャラクター”であるという自覚がある。  マスコットは、下界で人間達に愛でられ、使って貰えてナンボなのだ。特に僕たちは“株式会社ハニークリーム”という会社のマスコットとして絶賛売出し中のキャラクター。下界で僕たちのキャラが人気であればあるほど、グッズが売れれば売れるほど、SNSで人気が出れば出るほど僕達の世界も増えていくのである。  例えば新しい島が出来たりとか、新キャラが誕生したりとか、エピソードが増えたりとかまあそういう具合。  ゆえに僕達マスコットにとって、人間達にどれほど人気があるのか?は死活問題なのだったが。 「止めるなと言っている。まんたは今本気で怒っている」  その人気問題、が原因で今、僕の友達のまんたが激怒して大変なことになっているのだ。何故ならば。 「クッキーワールドの奴らのせいで、まんたたちは滅亡の危機に瀕しているのだから!」  これである。
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