犬より猫が好きな理由

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 一通りやりきって、やっと私は自分の夕飯にありついたのだった。 *  朝起きて、恐る恐る書斎を覗けば、猫の獣人は消えていた。  食べ物も果物以外はきれいに完食してあった。 (出て行ったのか……)  ほっとして開いたままの窓から外を見ると、真っ黒な毛の背の「長い」男が、ズボンの前を寛がせて、私の育てている花壇に水を遣ろうとしている。  ――いや、待て。 「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何してくれてんのよ!!」  私の声は、ほとんど悲鳴だ。 「え? なにってナニしてんだけど」  完全に私に見せつけるような手つきで陰部をゆっくりと露出させ、扱くようにして花壇の端に放尿する。 「立ちションて言え!! そして、会話にエロを入れるな!」  私とがっちりと目を合わせたまま、放尿を続ける。  恍惚とした表情が変態性を際立たせる。 「立ちションじゃないよ、マーキングだし」  いや、立ちションだ。 「玄関先に尿をかけるのは立派な犯罪です!」  ガミガミと叱りつける。  こんな時、犬だったら尻尾を巻いてクーンとかいうだろう。  だが猫はこうだ。 「だって、犬とか入ってきたら嫌じゃんか」  言いながらブンと亀頭の先をこちらに向けるな。 「猫の本能を否定するのは獣人愛護の精神に反しない? ねえ、ご主人?」 「ご主人じゃない! 今すぐ敷地内から出て行って」  門の外を指差すと、ゆっくりと目を逸らす。 「無理、ここはもう俺のテリトリーでーす。俺、本能に従っているだけなんで」 「本能でここで用をたすっていうの?」 「そう。本能だから諦めて」  まだ陰茎をぶらぶらさせている。 「……去勢、去勢してやる!!」  思わず手元にあった本を投げつけたが、猫獣人には届かなかった。  仕方なくサンダルをつっかけて、害獣を追い出しにかかる。 「ひゃぁぁ!」  出したことのないような悲鳴が出る。  花壇に近づくと、被害はもっと大きかったことが分かった。  花壇の端に立てておいたポールも濡れてる……。  明らかに高い位置を狙ってヤッている。 「バカ猫、バカ猫!」  洗い流した。洗い流しまくった。  すぐにでも水回りの魔法道具を買わなければ!  洗濯の為じゃない、猫に水をかけて追い払う為だ。 「あー、いけないんだ、そんなこと言ってー。獣人愛護法違反で通報案件ですよー」
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