19人が本棚に入れています
本棚に追加
一通りやりきって、やっと私は自分の夕飯にありついたのだった。
*
朝起きて、恐る恐る書斎を覗けば、猫の獣人は消えていた。
食べ物も果物以外はきれいに完食してあった。
(出て行ったのか……)
ほっとして開いたままの窓から外を見ると、真っ黒な毛の背の「長い」男が、ズボンの前を寛がせて、私の育てている花壇に水を遣ろうとしている。
――いや、待て。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何してくれてんのよ!!」
私の声は、ほとんど悲鳴だ。
「え? なにってナニしてんだけど」
完全に私に見せつけるような手つきで陰部をゆっくりと露出させ、扱くようにして花壇の端に放尿する。
「立ちションて言え!! そして、会話にエロを入れるな!」
私とがっちりと目を合わせたまま、放尿を続ける。
恍惚とした表情が変態性を際立たせる。
「立ちションじゃないよ、マーキングだし」
いや、立ちションだ。
「玄関先に尿をかけるのは立派な犯罪です!」
ガミガミと叱りつける。
こんな時、犬だったら尻尾を巻いてクーンとかいうだろう。
だが猫はこうだ。
「だって、犬とか入ってきたら嫌じゃんか」
言いながらブンと亀頭の先をこちらに向けるな。
「猫の本能を否定するのは獣人愛護の精神に反しない? ねえ、ご主人?」
「ご主人じゃない! 今すぐ敷地内から出て行って」
門の外を指差すと、ゆっくりと目を逸らす。
「無理、ここはもう俺のテリトリーでーす。俺、本能に従っているだけなんで」
「本能でここで用をたすっていうの?」
「そう。本能だから諦めて」
まだ陰茎をぶらぶらさせている。
「……去勢、去勢してやる!!」
思わず手元にあった本を投げつけたが、猫獣人には届かなかった。
仕方なくサンダルをつっかけて、害獣を追い出しにかかる。
「ひゃぁぁ!」
出したことのないような悲鳴が出る。
花壇に近づくと、被害はもっと大きかったことが分かった。
花壇の端に立てておいたポールも濡れてる……。
明らかに高い位置を狙ってヤッている。
「バカ猫、バカ猫!」
洗い流した。洗い流しまくった。
すぐにでも水回りの魔法道具を買わなければ!
洗濯の為じゃない、猫に水をかけて追い払う為だ。
「あー、いけないんだ、そんなこと言ってー。獣人愛護法違反で通報案件ですよー」
最初のコメントを投稿しよう!