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第6話(BL特有シーン・回避可)
ダブルベッドに横になるなり霧島が躰を重ねてくる。
嬉しい重みを受け止めながら仰け反らせた白い喉に唇が押し当てられた。熱い舌が濃厚に這い昇ってきて唇を思い切り貪られる。
「んっ……んんぅ、ん……はぁん、忍さん」
「そんなに色っぽく鳴くな、目茶苦茶にしたくなるだろう」
そう言うと霧島は京哉のパジャマのボタンに手を掛けた。全て外され、袖を抜かれる。下衣も下着ごと剥ぎ取るように脱がされ京哉は身を捩らせた。
既に勃ち上がった先端から蜜を零してしまっているのを知られ、淫らな躰が酷く恥ずかしかった。
「隠すな、全部知っている」
「だって……僕だけこんな……っん」
珍しく声を上げて笑った霧島は自分も素早く脱いで全てを晒す。何ひとつ恥じない堂々とした躰は引き締まり、美術彫刻の如く京哉の目に映った。
体毛の薄い象牙色の滑らかな肌から男の色気が匂い立っているようである。そして霧島も躰の中心を熱く滾らせ蜜で濡らしていた。
それだけではなく屹立の太さたるや只事ではない。
いつものことながら京哉はその圧倒的な存在感に思わず息を飲む。こんなのを今から受け入れるのだ。
京哉よりもよほど経験のある霧島が言うには相手が誰であっても避妊具は欠かせたことがなく、更には潤滑剤などの助けを借りなければ行為に及ぶことすらままならなかったらしい。避妊具は感染症予防のセオリーである。
それが京哉とは初めての時から隔てる物なく触れ合いたかったのだという。セオリー違反と知りつつ何故そう思ったのかも自身で分析できないまま。
聞いて京哉は素直に嬉しかった。けれどそのとき同性と初めてだった京哉はさすがに少々傷ついて、翌日は仮病で有休をとるハメになったのだ。
一方の霧島はそんな京哉を甲斐甲斐しく世話しながら自分でも初めての体験をした挙げ句、既に躰は京哉に堕ちてしまっていたのである。
あれ以来、京哉を抱き尽くし馴らした霧島はセオリー違反のままだ。いわば京哉に甘えている訳で、黙って甘える年上の格好つけ男に京哉は先に甘えて見せる。
「忍さん……欲しいよ」
灰色の目で頷いた霧島はベッドのヘッドボードの棚からガラス瓶を取り上げ、胸に一吹きする。愛用のトワレはペンハリガンのブレナムブーケで京哉も大好きな香りだが、機捜隊長は内勤にも関わらず大事件が起こると自ら飛び出して行くため、現場に匂いは残せないと言って普段は滅多につけない。
だが行為の時は香らせてくれるので、今ではこの苦みのある爽やかな香りは京哉が欲しいという意思表示となっていた。
「ああ、いい匂い……忍さん、きて」
「京哉……私の京哉、お前の全てを汚したくて堪らない」
組み敷かれながら艶やかな黒髪をかき乱した。鎖骨から首筋までを舐めねぶられ、きつく吸い上げられて霧島の証しを赤く刻まれる。
衣服を身に着けても見えそうな処にまで穿たれては週明けの出勤時に自分が困るのだが、今に限って京哉の中に拒む思いは浮かばなかった。
甘い痛みに酔った京哉はいつしか自ら躰を開いている。
過激な特別任務をこなすようになっても細く華奢で小柄、日焼けもしづらいため肌も白くて、いかにもひ弱な躰が好きではなく、霧島を前にして初めの頃は劣等感ばかり刺激されていた気がするが、今は愛しい男が慈しんでくれるので、そう嫌いではない。
壊れ物の如く扱わず激しく愛してくれるのも良かった。そう、あの激しさを想って甘く乞う。
「もう、お願い……忍さん、中に――」
「分かった、待っていろ」
腰の下に枕を押し込まれ淡い色づきを露わにされた。そうしておいて霧島は自分の指を口に含みたっぷりの唾液で濡らす。期待に悶える躰に一本目の指を挿入した。
普段から深爪し整えた優しい指が奥まで侵入する。長い指に深い処を掻かれて京哉は抑えようもなく高く喘いだ。
「あぅん……忍さん、いい、そこ……はぁん!」
指は巧みに蠢き京哉の細い腰は勝手に前後し始めていた。霧島が宥めるように白い内腿を軽く叩いてくれる。それでも淫らに身をうねらせるのを止められない。
「こら、そんなに動くと傷つけるぞ」
「傷つけてもいいから……ああっ、はぅん」
「だめだ、本当に傷つけ引き裂きたいのをどれだけ我慢していると思っている」
「初めての、んっ、僕に……あんなことした人が? はあっ!」
「傷ついてなお、この私を咥え込み夢中にさせたのはお前だろう? ……きついな」
数えきれないほど抱き合ってきたが、それでも京哉の身は初めて抱いた時と変わらず、男を知っている躰とは思えないほどきついらしい。
しかし霧島への絶対的信頼からか、指でほぐされるうちに体内が熱く溢れるほど滲む。
「はあっ、そこ、良すぎ……んんっ!」
「ここだな、欲しがっている。甘そうなのがもう溢れてきたぞ」
低く甘く響く声を聞きながら増やされる指を京哉の躰は呑み込んでゆく。喉からは止めどなく喘ぎが洩れていた。対して煽る霧島の低い声は酷く冷静だ。
あまりに冷静なので喘ぎ悶えながらも京哉は瞑っていた目をそっと開けて見る。すると狭いそこに自分を受け入れる準備をさせる霧島はポーカーフェイスと思いきや、端正な顔を僅かに歪ませていて酷く色っぽい。そして反り返ったものからは蜜が糸を引いて滴っていた。
京哉を欲しがり泣いている。
「忍さん、もういいから……っん、入れて」
「私も我慢できそうにないな」
全ての指が抜かれ、膝を立てた脚を更に押し広げられた。張り裂けんばかりになった霧島のものがあてがわれる。蜜を塗り込んだのち灰色の目を眇めて宣言した。
「京哉、入るからな」
「ああっ……あっ、あっ、はぁんっ! いっ……つうっ!」
「すまん、もう少し、我慢してくれ――」
どれだけ馴らされていても霧島を受け入れるのはいつも苦しい。だが悲鳴のような喘ぎを放ちながらも霧島の与えてくれる苦しさまでもが京哉の悦びだった。
ゆっくり時間をかけて霧島は切っ先を何とか収める。途端に己を最後まで京哉に受け入れさせてしまった。当然ながら京哉は突き当たりまで埋められ苦しい。
それでも苦しいだけではなく京哉は自分の全てが霧島で満たされた気がして、他のどんなことでも得られない悦びを感じていた。
「いい、ですから、忍さん、動いて……思い切り突いて」
「そんなに煽って、どうなっても知らんぞ」
腰を引いた霧島が離れてしまうかと思った瞬間、突き上げられた。鳥肌の立つような快感が京哉を押し包む。幾度か貫かれているうちに京哉の躰が淫らな水音を立てだした。
傷つける心配がなくなり、霧島は更に腰の律動を速くする。
「ああっ……すご、い……忍さん、いい、ああんっ!」
「お前もいい、最高だぞ……っく!」
破られそうなくらい激しく攻められた。京哉も霧島のスライドに合わせて腰を揺らめかせる。夢中で躰をぶつけ合った。
幾らも経たないうちに京哉は背筋を突き上がってきた疼きを抑えきれなくなる。溢れ出す予兆に堪らなくなって叫んだ。
「あっ、早く、忍さん……いく、いっちゃう……あうっ!」
「京哉……あっ、く――」
奥深くを霧島にずぶ濡れにされながら、京哉は恥ずかしいくらい噴き上げて腹から胸まで白濁で汚す。何度も身を震わせて放つと京哉はシーツに身を沈み込ませた。
だが我が身から抜き去った霧島を見て再び息を呑む。放ったばかりなのに霧島は放つ前よりも太く滾らせ、下腹につくほど反り返らせていたからだ。
それに年上の愛し人が一度くらいで満足しないことは分かりきっている。
もっと欲しいのは京哉も同じで小さく笑うと自ら身を返した。小柄ながら伸びやかな肢体をシーツに這わせ、何もかもが露わな煽情的な姿態を取る。
そして肩越しに振り向いてとろりと甘く微笑み誘った。
「して。忍さん、好きなだけ僕を汚して」
「くっ……京哉、覚悟していろ!」
細い腰を掴まれ、霧島自身の欲望が溢れ出ている窄まりに捩じ込まれた。最初から容赦なく貫き突き上げられる。
自分から誘ったとはいえ霧島の求め方の激しさに京哉はもう呆然と揺らされているしかない。その攻め方から京哉は霧島がもはや理性をとばしてしまったことに気付いていた。
より深くまで届いた切っ先に抉られ、内襞がちぎれそうなほど掻き回されて腰が蕩けそうな思いを味わう。乾いた砂が水を吸い込むかの如く、京哉は強烈な快感を貪った。怖いくらいの幸せと快感に溺れながら京哉は愛し人に訴える。
「忍さん、だめ……またいっちゃう、出ちゃうよ!」
「だめだ、京哉、もっと――」
「ああん……やだ、きつい、忍さん、許して!」
思い切り激しく腰をスライドさせながら霧島は京哉の熱いものをきつく掴んでいるのだ。堰き止められ京哉は苦しさに悶える。思考が真っ白に灼けた。
次には縛めが緩んで京哉はあまりの快感に自分が悲鳴じみた声を上げたのにも気付けなかった。堪らなく甘い声が部屋の空気を震わせる。
「ああんっ! あっあっ……はうんっ!」
「うっ……く!」
再び霧島に熱く濃く濡らされるのを感じつつ、京哉は霧島の手の中に迸らせた。
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