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「明日で夏休みも終わるナー。口止めされていたけれども。これは独り言。そう言えば俺のクラスの浅野が転校するナー。残念だナァ」
「!」
「今度は海外らしい。そこで永住権を取るそうダー。日本には当分戻るアテはないのかァ。だったら好きな子が居ても好きって言えないよネー。浅野も辛いよな……でも」
そこで先生は私を見て。
「夏が終わっても。小林聡子の恋は終わらない。俺の生徒の小林聡子はこんなことじゃめげない。きっと、将来──浅野聡子になって同窓会に来るぐらいのタフなやつだ」
「せ、せんせ……っ」
「明日、海外に立つそうだ。いまなら間に合う。行ってこい」
「はいっ!」
私は急いでベッドから起き上がって、カバンを手に掴んだ。
そうか。だから浅野は『元気で』なんて言ったんだ。
夏はもう終わるが、この恋まで終わらせるつもりなんか毛頭ない。
「浅野のバカっ! 海外なんてこの世界に居るなら一緒の土地に住んでいるのも同然じゃないっ!」
私は先生にお礼を言って保健室を飛び出した。
夏の終わり。
私の恋はまだ始まったばかりだった。
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